日々の業務の中で行っている安全対策についてまとめる機会がありました。
例えば酸素濃度計のようなハード面を充実させることも大切ですが、
今回は運用における工夫・心掛けといったソフト面についてまとめてみました。
誰しもが知っている一般的な安全策かもしれませんが、
ここで改めて振り返る事で自分自身の安全への認識を新たにする事を目的にご紹介いたします。 <バルブ全開後に少し戻す> 見た目で開閉状況が判断できないハンドルが円形状のバルブの場合、 力いっぱいに全開まで開けて硬くなっているとその硬さから「閉」だと誤認してしまう事があります。 そこで「開」状態にする時は全開まで開けた後、半周〜1周程度戻す事にしています。 こうしておけば次に触った際にバルブが開方向にも閉方向にも可動状態なので明らかに「開」状態だという事がわかります。 一般的には開閉状態を示すタグがバルブに掛けられている事が多いです。 しかし日常的に頻繁に操作するバルブの場合は、その操作頻度からタグの付け替え忘れ等が起こり得るので表示タグの信頼度が落ちてしまいます。 また普段触らないバルブでもメンテナンス等で一時的に頻繁な操作を伴う場合、 タグの付け替えを省略して最後に行おうとして付け替えを忘れる事も想定されます。 開閉タグも参考にしつつ尚且つ、タグが無くても判断できる状態になっているのが望ましいと考えます。 |
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開閉表示タグのついたバルブ | 全開後に少し戻す |
<開/閉は字面が似ているので併用は避ける> メンテナンスやトラブル復旧など多数のバルブ操作を伴う作業では“どこをどう操作したか” “初期状態はどうだったか”がわからなくならないように記録を付けておくのが必須です。 メンテナンスの場合は決まったバルブを操作するのであらかじめ記録簿を作成しておくことが出来ますが、 トラブルに起因する復旧作業などは記録簿を準備していないので関連図面などの余白にメモ書きする事が多くなります。 この場面で注意が必要なのがバルブ操作についての「開/閉」表記です。 現場では大抵殴り書きで記入するため字が雑な上、開/閉は字面が似ているため後で記録を見返した際に どっちなのかわからなくなった事がありました。 この場合、誤認識してしまうと意味が真逆になってしまうので非常に危険です。 そこで思い付いたのが「開/CLOSE」「OPEN/閉」の組み合わせです。 「OPEN/CLOSE」でももちろん大丈夫ですが英語と漢字の組み合わせの方がより鮮明に区別がつきます。 また、あえてこうする意図を記入しながら実感できます。 |
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「開/CLOSE」の操作メモ | 「開」と紛らわしい「閉」(記録簿から抜粋) |
せっかくなので過去の記録簿から「開」のように見える紛らわしい「閉」の記述を抜粋してみました。 これを見ると「門」の略字を殴り書きした際に中央の縦線を長く書いてしまう癖があるようです。 この縦線が内側にある「オ」に干渉しているのが良くないです。 更に「オ」も「才」のように3画目が右側へ飛び出してしまう癖が見られます。 この二つの癖がよりによってうまい具合に「開」に似た形状を形成しています。 右図一番右下のはもう「開」を書いたようにしか見せません。 略字を使わず真面目に「門」を書けばいいのですが・・。 |
<一人職場での高所作業> 極低温室は建物に一人だけで勤務するという非常に特殊な環境です。 主に訪れるのは学生、教員および業者さんですが、このうち定期的に訪れるのは週1回行われる液体窒素充填のタンクローリーの運転手さんです。 学生や教員は不定期で用のある時にしか訪れず、低温寒剤の利用量が少ない時期になると1日中誰も来ない事もあります。 この環境下で心配になるのが、自ら助けを呼べなくなるほどの重篤な負傷です(移動不能、意識不明など)。 すぐに処置を受ければ助かったのに発見の遅れにより死亡につながってしまうケースが考えられます。 そこで危険を伴う作業を行う際は人を呼んで立ち会ってもらうのが安心です。 しかしながら危険作業を挙げるときりがありませんし、その度に人を呼ぶのも現実的ではありません。 線引きの難しいところですが特に高所作業に関しては転落した際に重大な負傷を負う危険性が考えられ注意が必要です。 実は今までその危険性を認識しつつも「ちょっと位なら大丈夫だろう」「わざわざ呼ぶのは申し訳ない」という思いから 一人で高所作業を何度も行ってきました。今回ここへ掲載するに当たり今後徹底するきっかけとするつもりです。 急ぎの作業の場合は人を呼び、急がない案件は人が来るタイミングで行えるようリストに控えておくのが良さそうです。 |
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今まで装置天板へ登って何度か作業をした事がありましたが
労働安全衛生規則を調べると高さ2m以上の場所で作業する場合は
安全帯を用いるなど墜落防止策をとらないといけないようです。
また脚立の天板の上に乗っかって作業する事も危険行為のため禁止のようです。
脚立を用いた作業での主な禁止事項として ・天板の上に乗らない ・2段目以下の踏サンで使用する (2m以上の脚立は3段目以下) ・天板を跨らない。座らない。 とあります。跨ぐのはいけないんですね。 以上より高所作業に関しては単純に人に見守ってもらうだけでは不十分で 安全帯や高さに余裕のある脚立など作業設備を準備する事、 またその使用方法についてもきちんと理解する事が必要だと改めてわかりました。 |
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見守ってくれる人を呼んだのはいいが 脚立の使用方法が間違っていた・・・ |
<忘れ防止タイマーとマグネットシートの活用> 行っている作業が時間間隔を伴って操作しないといけないような場合(例えば起動後10分後にバルブを開けて、30分後に○○して・・のような作業)、 空いてしまった時間に別な作業をしてしまうと本来の作業の事を結構な確率で忘れてしまいます。 ほったらかしにしても安全な作業ならまだしも危険に陥ってしまう作業であるならばこれは深刻です。 そこで忘れ防止にタイマーを多用しています。 液体ヘリウムを充填する作業場所および事務デスクにキッチンタイマーを複数用意しています。 しかし日常業務では一ヵ所に留まらず動き回っている事も多々あります。 部屋から出たり入ったりしていたため、せっかくタイマーをセットしたのに鳴った事に気が付かなかったという事例がありました。 そこでこれに対応するため持ち歩ける首掛式のタイマーも活用しました。 ところがこれも万能ではなく、アラームが鳴った時に手元で止めたまま現場に行き忘れてしまうことが良くあります。 すぐに現場へ行けばいいのですが、何か別の事を行っていると“あともう少しだけ” “区切りのいいところまで”のつもりで結局うっかり忘れてしまいます。 つまりタイマーを活用する人の心掛け次第なのだと思いますが、なかなか難しいところです。 その他にタイマーのようにその瞬間ピンポイントで知らせてくれなくてもいいような忘れ防止策として マグネットシートに書き込んで貼っておくというのも有効です。 注意書きを措置が必要な現場・機器に貼っておけば次に見た時に思い出すことが出来ます。 現場や機器の場所へ必ず行くとは限らない場合は帰宅時に必ず通る通用口の扉に貼っておけば最低限その日の最後には気が付くことが出来ます。 |
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キッチンタイマーとストップウォッチ | 注意書きマグネットシート |
物忘れによる過去の大失敗として室内で液体窒素をダダ漏れさせた事例がありました。 当施設ではヘリウム液化装置起動の際に液体窒素配管の予備冷却を目的として室内の手動バルブを開いて窒素ガスが液体に変わるまで放出させる行程があります。 通常窒素ガスから液体窒素へ変化すると流音が変化して(静かになる)それをサインにバルブを閉めに戻ってきます。 ところがその時は液体に変化した後も更に芯から冷やしてやろうとバルブ開度を微開にして流し続けるという余計な行為をしてしまいました。 バルブ開度を微開にすると流量が減るので一度気体に戻ります。その後冷却が進むと再び液体に変わります。 しかし流量が少ないため流音が小さく音の変化で気が付くことが出来ないまま、うっかり忘れて小一時間過ぎてしまいました。 床の保護用に発泡スチロール容器を受け皿として用意していますが、 この容器を溢れ出し床中が霧がかったように白く覆われているのに気が付いた時にはゾッとしました。 この事例の場合、床の損傷よりも酸素濃度低下による人的被害の恐れがあり非常に恐ろしい状況でした。 いつもと違う行程が物忘れを誘発し危険な事故へ発展した事例として深く反省しなくてはいけません。 |
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液化機の先で放出して経路を予め冷やす | 受け皿用発泡スチロール容器と剥離した床 |