【既設機の老朽具合が深刻化】
平成7年度に設置された現在の液化用圧縮機は10年以上にわたる長時間の稼動に伴い老朽化が進んでいます。 老朽化が原因と思われる出力の低下やオーバーヒートによる運転停止など不具合が見られるようになってきました。
殊に常時高圧となっている内部よりオイルが漏洩している状態は年々ひどくなっています。 構造上修理は困難なためオイルを注ぎ足す事で保っている状況です。
写真は油滴を拡散させないようトレイで受け、回収している様子です。 一ヶ月に一度廃油を行いますが、その際に漏洩量を測っております。 漏洩量については最近になってカウントし始めたのですが、 この半年で漏洩量の増加傾向が急になったように見られます。


【移設機の登場】
平成18年に北陸先端科学技術大学院大学で設備の更新が行われ、その際に千葉大学と同機種の 液化用圧縮機が廃棄されるということになったため、譲り受け本学に移設させていただきました。
写真の左側が既設の圧縮機です。多発するオーバーヒートを少しでも起こさせないため 空冷の措置を施しています。右側が北陸先端科学技術大学院大学から移設してきた圧縮機です。 予備機として譲り受けてきましたが、長期間運転させない事による不具合や劣化を避けるため 液化運転ごとに既設機と移設機を交互に使用しております(電源の関係で2台同時起動は無理)。



【実力対決】
既設機と移設機の運転状況について液化速度および電気料金に関する製造単価をグラフにして比較してみました。 運転条件をなるべく同じにするため既設機のデータは移設機導入以降のデータのみに絞ってあります。

図2:平均出力圧−液化速度 図3:平均出力圧−平均消費電力


一運転での平均データの比較
(2006.05〜2008.03)
  既設機
(千葉大)
移設機
(北陸先端大)
液化速度
(L/h)
19.4 22.0
製造単価(電気)
(円/L)
56.9 55.2
稼働時間
(h)
15.3 14.5
出力圧
(psi)
198.1 205.1
消費電力
(kWh)
61.8 70.5



図4:平均出力圧−製造単価(電気)



図2:平均出力圧−液化速度
既設機、移設機ともに同じ傾向の帯に乗っている。平均出力圧が大きくなればなるほど 液化速度も上昇している。移設機のほうが出力圧が出ているので、その分液化速度も出ている。

図3:平均出力圧−平均消費電力
平行移動したような分布になっていておもしろい。出力圧が大きくなれば消費電力量も大きくなるという傾向は同じだが、 明らかに乗っているラインが違う。 同じ出力圧でも移設機のほうが既設機より平均消費電力量が大きい。つまり移設機のほうが電気をくっている。

図4:平均出力圧−製造単価(電気)
傾向がつかめない。消費電力量から導いた電気料金に関する製造単価で見た場合、既設機、移設機ともに 交じり合っている。また、平均出力圧による依存性も見られない。

結果的に1Lあたりの製造単価で比べたところ既設機、移設機でどちらが安く液化しているという 傾向は見られなかった。図3の平均出力圧に対する消費電力が移設機が高いのはどういうことだろうか。 風量が大きいと考えた場合、図2にて移設機のほうが同じ出力圧でも液化速度が大きくなりそうだが、 その様子もいまいち読み取ることができない。


【移設の意義】
既設機がいつ壊れるのかわからない状態で、同機種が他大学から放出されたのは 非常に運に恵まれていたと思っております。 移設にもかかわらず既設機と同等のスペックを発揮でき、また2台体制の安心感を得た事は、 現場としてはとても助かっております。
今回移設した圧縮機および周辺機器の譲渡にご理解とご協力・ご支援をいただきました 北陸先端科学技術大学院大学の技術職員および関係者に心より感謝いたします。