先日、技術職員をイメージさせるイラストを描く機会がありました。 良く連想するのが自動車整備のメカニックなどのイラストで、スパナやドライバーなどの工具が描かれている事が多いです。 それを真似て、自分でもいつも使っている「スパナ」「ノギス」「圧力調整器」を描いてみました。 今回はパワーポイントでなるべく簡易的に描きました。 書き進めると思いの外、平易に描くことが出来たので描画手順をご紹介いたします。 なお、もっと高度な描画手法があるのかもしれませんが、あくまでも素人の切り貼りイラストである事を申し添えます。

 
 
<スパナ>
シルエットがはっきりして分かり易いです。 世間一般でもほとんどの人が知っている工具ではないでしょうか。 自分でも日常的にも良く使う工具ですので、まずはこれを描いてみました。
スパナの両端は円、持ち手は長方形、切れ込みは六角形にします。 まず、円に六角形を重ねて切れ込みを入れます。 重ね量はお好みのバランスで適度に入れます。
素材はシンプルな図形 組み合わせる
 
 
コピーして2個目を複製し、それぞれを回転させます。 一方は15度で回転させて、他方は195度(15+180)で回転させました。 なお、図形がばらばらに回転しない様に円と六角形は重ねたらグループ化しておきます。 出来上がったら、円と長方形の中心位置を合わせて長方形の両端へ重ねます。
複製して回転 位置合わせをして重ねる
 
 
最後に色をスパナ本体と背景でそれぞれ塗り分けます。 円は本体の長方形と同じ青色にし、切り抜きの六角形は背景と同じ色(白)にします。
色を調整したら出来上がりです!
 
 

<ノギス>
次にノギスです。難しそうですが、とても分かり易いイラストを見つけたので真似てみました。 構成素材は四角形と角丸四角形、半円、四角形の一辺が半円になったもの(“フローチャート論理積ゲート”と言う名称ようです)です。 まずは素材の重ね合せです。 半円は2個に複製して円弧側を接触させたら、全幅を黄色い四角形の幅と同じになるように調整します。
素材はシンプルな図形 重ね合わせと複製、幅合せ
 
 
加工したそれぞれの部品および角丸四角形等を本体である長方形に配置します。 2個組半円は円弧の接触点が長方形の縁に来るようにします。 角丸四角形は、四角形の一辺が半円になっている部品(緑色の部品)に丸い角の部分が全て食い込むように配置します。 細長い四角形は本体の大きい四角形の縁に沿うように配置し、角丸四角形を突き抜けるようにします。 全て配置できたら部品の前後関係を変更します。 下側にある本体の四角形を最前面にもってきます。
位置に注意して重ね合せ 前後の順番を変更する
 
 
最後に色を調整して完成です。スパナと同様に本体カラーを一色に統一し、切れ込み部分を背景色に塗れば、 本当に切り込んであるように見えます。
できました!
 
 

<圧力調整器>
最後は圧力調整器(レギュレータ)です。 これはスパナやノギスほど一般的なものではないですが、 圧力計や歯車のような圧力調整ハンドルがイメージに合致するかと思います。 素材の点数が多くなりますが、やっている事は基本同じですので難しくないです。 まずは重ね合せです。
点数が増えたが単純な図形のみ 重ね合わせる
 
 
3つの円を同心円で重ねたら、オタマジャクシのような部品を3円の中心に配置します。これが圧力計になります。 これをグループ化して2個に複製したら、任意の角度に回転させます。針が振れていると圧力計らしくなります。 次に別の円に六角形を重ねます。重ねたら六角形の角が円に内接するように調整します(Shiftを押しながら描いたのに正六角形ではなかった)。
重ね合せたら回転させる 六角形を円に内接させる
 
 
台形を描き、これを複製して1.5倍のものを作り、重ねて一組にします。更にこれを6組複製します。 6組の台形を回転させます。回転角度は一つ目を30度、以降60度間隔で90,150,210,270,330度にしました。 回転させた台形を先ほどの六角形の角に配置します。 台形の出っ張り具合は任意ですが、台形の底辺が円からはみ出さないようにします。 実際の調整ハンドルはこんなに出っ張っていませんが、歯車っぽくも見えるので今回は多目に出っ張らせてます。
台形を複製し回転させる 台形を六角形の角に配置する
 
 
六角形は台形配置のための補助ツールだったのでこの時点で削除します。 縁取りになる大きな円を下側へ、切り抜きになる小さな円を前面へ重ねます。 台形の下になってしまった本体の円(青色)を前面へ順番を変更します。
六角形はお役御免 青い円を前へ出す
 
 
長方形と台形を組み合わせて圧力調整器の二次側を形成します。 別の長方形は複製してそれぞれ角度を付けます。角度は台形の傾きと同じ30度と330度にしました。 また、三角形を複製・回転して長方形の上下にバランス良く配置します。 ちなみに、この小さな三角形はスリットです。 取付ナットにスリットが入っているタイプは逆ネジ仕様を示します。 これはデザイン上無くてもいいのですが、ヘリウムガスボンベがその仕様なので、せっかくなので描きました。
長方形と台形を配置 長方形の回転、三角形の配置
 
 
製作した各部品を重ね合せて圧力調整器を作り上げます。なんかプラモデルを組み上げるような気分です。 圧力計のネックにあたる角度をつけた長方形(緑色)は圧力調整ハンドルの台形の中心に重なるよう配置するとバランスが良いです。
部品を組み上げて形を形成
 
 
こちらも最後に色を調整したら完成です。 もう少しシンプルにすべきでしたか、描いていくうちに細かくなってしまいました。
やっとできました!
 
 
歯車状の圧力調整ハンドルの縁取りは、図形の枠線ではなく、サイズ違いの図形を重ねる方法で描きました。 枠線があると図形を重ねた際、前面にある図形の枠線まで前面に出て来てしまうためです。 下図にあるように円を前面に配置すると台形の前に円の枠線が出て来てしまいます。逆もしかりです。
一方、重ね合せ方式も必ずしも綺麗な縁取りが出来るわけではありませんでした。 今回は円と台形それぞれにサイズ違いの複写図形を重ねて縁取りを作り、さらにこれらを結合して縁取り付きの歯車を完成させました。 しかし、シンプルに円と台形だけで歯車を形成した上で、これを複写してサイズを変えて重ねる方が描画方法としてスマートです。 そこで試してみたのですが、縁取り幅が均一になりませんでした。 これは円と台形、それぞれの元の大きさに対する縁取りの比が違うからだと思われます。 台形は1.5倍に拡大すると縁取りとして良い幅になったのに対して、円は台形よりも十分大きいので1.1倍程で台形と同じ縁取り幅になりました。 この倍率差があるため、歯車を完成させてから、縮尺を変更して重ね合せても縁取り幅が均一にならない訳です。
もっと高等なテクニックがあるのかもしれませんが、 上記の点を踏まえて描画すれば、なかなかうまくできましたので、これで良しとします。
枠線が前面に出てしまう 縁取りが均一な幅にならない
 
 

<組み合わせてアレンジ>
圧力調整ハンドルを歯車に見立てて中心の据え、スパナ、ノギス、圧力計を放射状に組み合わせてみました。 文字を加えてロゴマーク風にしてみるとカッコいいですね。 色を反転させるのも面白いですし、同色系の色でパーツ毎に塗り分けるのも良い感じです。

文字を加えてロゴマーク風に パーツ毎に塗り分けるのも面白い
 
 

<なぜスパナの角度は15度なのか。>
さて、今回スパナのイラストを描いた当初、柄と開口部の角度を何も考えずに30度にして描いておりました。 その後調べてみると、スパナの角度はJIS規格で15度に定められている事がわかりました。 これは知りませんでした。長年スパナを使っているのに恥ずかしい限りです。 でも、どうして15度なのでしょうか。

スパナの開口部の角度は15度だった
 
 
まず、スパナで回す対象となる六角ボルトの形状を考えてみます。 六角形の形状から予想が付くように、60度回す毎に角が同じ位置に来ます。 つまり60度回すことが出来れば、後は繰り返しなので何周でも回すことが出来ます。 スパナでの操作において必要最低回転角が60度という事になります。

回転させると60度ごとに角が同じ位置にくる
 
 
そこで15度のスパナでボルトを回すシミュレーションをします。 ボルトが正時位置(0度)に向いている場合、 ボルトをつかむとスパナの柄は15度の角度が付いています。 そこからスパナを回転して、水平線に対して上下対称な角度(15度+15度)にすれば、ボルトの回転角は30度となります。 この状態でスパナを裏返すと、開口部はちょうど30度向きが変わるので(-15度から15度になる=30度向きが変わる)、 30度回転したボルトにぴったり合う事になります。 裏側でも同様に30度回転させると、表裏合せて60度回転させたことになり、ボルトの六角形の角が初期位置と同じ位置に来ます。 これにより表で30度、裏で30度と繰り返す事で、ボルトを締め上げる事が可能となります。

@水平線を挟んで上下対称に
15度ずつ回転させる
A裏返すと開口部の向きが
ボルトの向きと一致する
 
 
では、柄と開口部の角度が30度のスパナはどうなのでしょうか。 上記と同様に正時位置(0度)に向いているボルトをつかむとスパナの柄は30度の角度が付きます。 これを水平線をはさんで上下対称に30度ずつ回転させると、表だけで60度回転する事が出来ます。 つまりボルトの角の位置が一回の操作で初期位置と同じになります。 こうなれば後は繰り返しなので、スパナを裏返さなくても、ボルトをつかみ返す事が出来ます。 あれ?!だったら「こっちの方が15度のスパナよりも楽でいいじゃないか!」という事になりますけど・・。

@水平線を挟んで上下対称に
30度ずつ回転させる
Aいきなり60度回転できたので後は繰り返すだけ
表裏どちらでもボルトをつかめる
 
 
では15度が良くて30度が良くない場面はどんな事が想定されるでしょうか。 その答えは「狭さ」です。実際の使用環境では狭い場所である事が多々あります。 30度のスパナの場合、所要角度は60度必要となるのに対して、 15度のスパナでは30度分のスペースがあれば裏返す事で、表裏合せて60度ボルトを回転させることが出来ます。 そこで、せっかくイラストを描いたので、狭い場所でのスパナの操作を角度を変えてシミュレーションしてみましょう。

15度のスパナで限界スペース 30度のスパナを使ってみる なるほど、厳しいですね・・
 
 
ボルトの向きが、30度のスパナでもはめられる向きになっていた場合はどうでしょうか。 ひとまず、スペース内で最大限回転させてみます。 しかしその後、持ち替える事が出来ず行き詰ってしまいます。

ボルトの向きが好都合な場合 30度は回せる その先が続かない・・
 
 
そこでスパナに角度が付いている意義ともいえる“裏返し”を試します。 裏返せば、確かにボルトをつかむことが出来ました。 しかし回せる角度はわずかで、その先がやはり続きませんでした。 30度の角度が付いたスパナでは、狭いスペースではボルトを回すことが困難になる事がわかりました。

裏返したらつかめた! でも、わずかしか回らない やっぱり、その先が続かない
 
 
では逆に15度よりも角度の小さいスパナの場合はどうなのでしょうか。 7度の角度のスパナでシミュレーションしてみました。 角度が小さい場合、正時位置(0度)のボルトに対しては難無くはめる事が出来ました。 そして同様にスペース内で最大限回します。 しかしその後、持ち替える事が出来ませんでした。 ボルトの回転角度が足りないため、次の面へはめられない状態です。

角度が小さい場合はどうか ひとまず壁まで回す でも、その先が続かない
   
裏返してもはめられない    
 
 
最後に0度、つまり角度の付いていないスパナでもシミュレーションしてみました。 大方予想通り、こちらも回転角不足で持ち替える事が出来ずに途中で行き詰ってしまいました。

0度のスパナはどうか ひとまず壁まで回す はめられない・・
 
 
角度が15度よりも大きいものは操作スペースも広く必要となり、狭い環境下では使い勝手が悪くなる事は予測がつきました。 ならば角度が15度よりも小さいものなら良いかと言うとそうでもなく、回転角が小さ過ぎるため、 継続的に六角ボルトの次の面をつかむことが出来ない事がわかりました。 スパナの角度15度とは、六角ボルトの形状からすると理想的な角度となっていると言えます。 角度が大き過ぎてもダメ、小さ過ぎてもダメ、意外と奥深いですね。 今回は非常に勉強になりました。