極低温室の出入り口にあるスロープ状のたたきには今まで縁に柵を設置していませんでした。 人の出入りは正面から一段上がり下がりしてきたので、階段かつスロープというような感覚でおりました。 しかし、主に液体ヘリウム容器がこのスロープを通って出入りしており、誤って縁から落下するような事があると大変危険です。 今更ながら危険性を認識しました。幸いにして落下事故は今まで起きていませんでしたが、 今回は上からの落下ではなく下から衝突して転倒するという予期せぬ事故がありました。 この転倒事故を受けて衝突回避と落下防止を目的に転落防止柵の設置が行われました。 また、これに関連して寒剤容器の運搬において障害となる段差についても注意しなくてはいけません。 極低温室内にも段差が多数あり小さいながらも軽視できない状況です。 この段差に対して簡易スロープを作って対応していますのでその様子についてもご紹介いたします。

縁に何もないのをあまり気にしてませんでした 柵があると安心感があります


<転倒事故>
事の発端は上からの落下事故ではなく下側から衝突して液体ヘリウム容器を転倒させた事故でした。 運搬してきた液体ヘリウム容器のスロープへの正しい侵入経路は、スロープの真正面まで回り込んでから方向転換して真っ直ぐにスロープへ侵入すべきですが、 今回は横着したのかスロープ先端の側面から侵入して勢いでスロープへ乗っかろうとしたようです。 しかし先端とは言え段差がありこの段差に車輪が引っ掛かり液体ヘリウム容器が転倒し、さらに容器ヘッドが壁へ追突したもののようです。 容器ヘッドと形状の合致する追突痕が壁にありました。 見た目がわずかな段差なので勢いをつければ乗り越えられそうに見える所がかえって危険を誘発しているのかもしれません。

正しい侵入経路 横から侵入して段差で転倒


<安全な運搬>
学内には転倒につながりやすい段差が無数にあるため一つ一つ対策する事は到底できません。 転倒防止対策としては運搬する人の心がけに頼るしかありません。 運搬時に注意すべき点を挙げてみます。
  • 重心が高い容器(背が高く細いタイプ)は本体腰部にあるハンドルを押して運びます。 容器上部のリングは開口部のガードであり運搬時に押すためのハンドルではありません。
  • なるべく2人以上で運搬します。転倒しそうになっても2人いれば立て直せる可能性が高まります。
  • 小さな段差でも甘く見ない。勢いで乗り越えようとせず車輪を浮かせる等慎重に通過してください。

運搬時の保持位置
また、段差での転倒と並んで良くある事故例として傾斜面を下る場面があります。 水平面を通行するのと同じ感覚でそのまま進むと、傾斜角度によっては容器が転倒・滑り落ちてしまう危険性があります。 小型容器を台車で運ぶ場合は、必ず台車にしっかりと固定してください。 万が一、固定措置がない場合は人が傾斜の下側に入り込み、後ろ向きでゆっくり降りる方法が比較的に安全です。
下り傾斜をそのまま進むと危ない 人が下側に入って後ろ向きに降りる
 
また、車輪が付帯しているような大型容器の場合は、人が下側で支えるのも必ずしも安全ではありません。 容器を引っくり返した場合、状況によっては下敷きになってしまう可能性もあります。 重量の大きい大型容器の場合は必ず二人以上で運んでください。
暴走、下敷きの恐れがあるので二人以上で運ぶ


<簡易スロープ>
極低温室にも小さな段差が多くあり寒剤容器の車輪が引っ掛かってしまいます。 そこで簡易スロープを製作して段差の解消に役立ててきました。 主に建具枠が段差になっており常時ドアを開いている箇所はスロープを床に貼り付けて常設していますが、 外部への出入り口はドアの開け閉めがあるので常設できません。 これらの箇所はドアの内側にスロープを立て掛けて保管しておき、通行時にその都度敷いて使ってもらっています。
このスロープは製作が簡単で、高さも20mm程度の小さな段差までなら現場に合わせて設定し易いのが特徴です。 耐久性は通行頻度や荷重サイズにもよりますが当施設の場合12,3年使用して端が少し欠けている程度で結構しっかりしている印象です。 ネックなのは重さです。通る度に敷かないといけないタイプのものは重さのせいで敷くのが億劫に感じてしまいます。 もう少し軽量な素材のものが欲しいところです。

段差解消に簡易スロープ 建具枠が意外と曲者


スロープの使い方は単純に段差のある部分へ敷くだけなのですが意外と使い方がわからない学生が多くて驚きました。 下図に正しい敷き方と実際にあった誤った使い方を示します。 段差を下る場合はスロープが無くてもそれ程問題ありませんが、 段差を上る場合はスロープが有ると無いとでだいぶ違いますのでぜひ利用してください。

また、保管する際のスロープの立て掛け方も何故か多くの学生が薄くとがった先端側を床へ向けて置きます。 薄い面を下側へ向けるとスロープ全体の重さが弱い部分にのしかかり、接着部分がはがれたり割れてしまう原因になります。 弱い部分に負荷がかからないよう厚みのある重い側を床へ向けて置くよう心掛けてください。


<構造と寸法>
簡易スロープの構造は非常にシンプルで1mm厚の板を長さを少しずつ変化させて積み重ねただけです。 寸法については材料板のサイズ1,820mm×910mm(畳の大きさ)を元に切り出し寸法を考えました。 今回実際にカットした寸法を下表に記します。 もっと無駄無くきれいに使い果たせる切り出し寸法があるかもしれませんがご参考ください。

  幅760mm×高さ16mmのスロープ 構成板の寸法

板を重ねただけの単純構造
長さ(mm) 材料板
34 B
64 A
93 B
124 A
150 A
184 B
213 B
243 B
長さ(mm) 材料板
273 B
303 B
333 B
362 B
394 A
424 A
454 A
484 A


スロープのサイズは幅760mm×高さ16mm、つまり16枚の板を貼り合せています。 当初は長さ30mm板を最小サイズとし、以降長さを30mm単位で伸ばす寸法(30,60,90,・・・480)としていましたが、 材料板の端が20mm無駄に残ってしまうため余り分を適当に割り振って加えました。 更にこれに合わせて一部寸法も変更しました。 上記の寸法表で均一差でない変な数値となっているのはこのためです。 なお、184mm板が寸法上どうしても切り出せないため150mm板と34mm板の足し合わせとなっています(青い部分)。 この組み合わせについては余っている余白の範囲で自由な長さで組み合わせできるので 例えばB板の青150mm⇒109mm、青34mm⇒75mmとすれば、 隣にあるB板の黄34mmと合わせて109mmになるのでカットする手間が少しだけ省けます。

30mm単位だと少し余ってしまう 余った分を適宜割り振りました


<製作>
今回新たに1つスロープを新調しましたので製作の様子をご紹介いたします。 製作はカットして貼り合せるだけと至って単純です。 また材料もどこからでも手に入る安価なもので製作しました。

材料は塩ビ板2枚 切る位置に線を引いておきます 引っ掻いて溝を掘るカッターです
 
1枚目カット 2枚目カット 角は危ないので落しておきます
 
こんな感じ 接着剤で貼り合せます 重しをおいて圧着します
 
できました! 厚い側には少し角度を付けてます 使い心地良好です