性能
既製品の内径4.0mmの移送管と移送速度および浪費率に関して比較してみました。

【図1:充填量-移送速度】
製作品の内径は2.7mmですので断面積で比べると半分以下です。このため移送速度は断然遅くなります。これは構造上の能力ですので仕方がありません。グラフではそれ以外の移送条件が同じであるデータをプロットしてあります(容器から容器への移送、加圧平均は約0.3kgf/cm2)。
充填量が増えると移送速度が速くなる傾向があります。これは移送の初期段階では周囲(移送管の内壁や移送先の容器の内壁)を冷却するための蒸発ロスがあり、充填量が増えるとともにその影響が小さくなるためと考えられます。既製品に比べて製作品はこの傾向が小さいように見えます。ばらつきはありますが充填量による移送速度への影響は読み取れません。これは初期における蒸発ロスが小さいからと思われます。流量が少ないので過度の蒸発を抑制し効率よく冷却しているのかもしれません。

【図2:充填量-浪費率】
浪費率:使用量/充填量(ある量を充填するのにどれだけ使用するのか、浪費の度合いを示してます)
一般に充填量が少ないと浪費率が大きくなると考えられます。これは上記と同様で、冷却のために費やす蒸発ロスのためです。既製品ではきれいな特徴は出ていませんが、その傾向があるようにも見えます。一方、製作品では充填量に関わらず浪費率を保っています。やはり上記の移送速度と同様で、流量が少ないので余計な蒸発を抑えているのではないかと考えられます。


【図3:充填量-平均浪費率】
10L幅で各充填量毎に浪費率の平均をだし推移をグラフにすると、少量移送での性能の差がより鮮明に現れました。既製品においては充填量が少なくなるほど移送効率が悪くなり浪費率が大きくなっています。一方、製作品は充填量に関わらず浪費率の小ささを維持しています。
また移送性能の具体的数値を表1にまとめました。充填量30L未満に限定した場合、既製品の移送管では浪費率が大きくなると同時に移送速度も低下している事がわかります。

表1.既製品と製作品のスペック比較

平均データ
比較
平均移送速度
(L/分)
平均浪費率
(L/L)
全般 既製品 1.64 1.23
製作品 1.05 1.11
30L未満 既製品 1.05 1.38
製作品 1.07 1.12



特徴
上記でも考察していますが 「少量移送においても移送効率を損なわない」 点が最大の特筆点です。時間は長くかかりますが大量移送でももちろん有効です。近年予算状況が厳しいですが、少しでも研究経費を節約したい状況においては、液体ヘリウム使用料金を抑制する強い味方となり得ると思います。

<主な特徴>
・蒸発損失が少ない
・移送速度が遅い
・フレキシブルである
・軽量である
・移送先の圧力上昇を比較的抑えられる

表2.スペック

全長 4m(弧状に曲げてある)
重量 220g
内径 2.7mm
外径 5.0mm
移送速度 1.0L/分(加圧0.3kgf/cm2
浪費率 1.1倍(10L汲むのに11L使用)
製作費用 約20,000円