今回はいつもよりも大きいサイズにチャレンジしようと、6mm-8mm管の組み合わせでトランスファーチューブを製作してみました。
今まで作ってきた3-5管、4-6管に対して順当に考えれば、5mm-7mm管を作るべきでしたがパイプの在庫が無く、一段飛び越えた形になりました。
8mmの直管を触ってみた感触として、以前製作した9mm-12mm管のように硬くて、全く実用性に向かないものになるのではないかと不安がありましたが、
作ってみると、意外にも3-5管や4-6管のようにフレキシブルで使い勝手の良いものが出来あがりました。 |
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上から6-8管、4-6管、3-5管 | 口径もかなり大きい |
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<移送能力> 製作後、早速試験移送してみた結果を示します。 まず、移送速度は20〜30kPa程度の加圧で5.0L/分前後出ました。4-6管の2倍程度にもなり計算した時とても嬉しくなりました。 このグラフにメーカー製品の1/4-3/8インチ(6.35-9.5mm)管のデータを加えてみると、 製品に対しても同等もしくはそれを上回る移送速度を記録している事がわかりました。これはなかなか素晴らしい。 また、蒸発損失を示す浪費率でも概ね1.1〜1.2倍程度となっており、4-6管と同等のスペックを示しています。 チューブが太くなりその分熱容量も増えているはずなので、もう少し悪いかと思いましたが今のところ良好です。 まだデータ数が少ないので引き続きデータを貯めていきます。 なお、浪費率のグラフが不自然に縞模様になっているのは1L単位で液量を検量しているため、浪費率計算で特定の数値が算出されてしまう事によると思われます。 |
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移送速度は5L/分前後出ました | 蒸発損失も他チューブと同等のレベル |
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<ベローズの収縮量> ところで液体ヘリウムを流した際の温度変化による内管の熱収縮量はどれくらいあるのでしょうか。 納品された製品のベローズをそのまま使って組み立てた旧作トランスファーチューブの場合、 液体ヘリウム移送中の収縮した状態を見ると縮みきっているように見えます。 本当はもっと縮みたいのにベローズのストロークを使い切って縮みきれていなかったとしたら、 ロウ付け部分など接合箇所に応力が掛かって、使っていくうちにいずれ破損の原因につながりかねないと気になりました。 そこで、まずベローズの縮み量を測ってみました。 これによるとストロークは13mmとわかりました。 |
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元サイズは38mm | 縮ませると25mm(意外と縮んだ) |
実は今回は製作前の段階で、指でベローズを引き伸ばしてストロークの増大を試みてました。
しかし実際は冷却によって何ミリ縮んでいるのか?上記で求めたストローク13mmでは足りないのか?予め確認しておくべきでした。
そこで今更ながら液体ヘリウム移送中の収縮量を確認してみると、6〜7mm程度の縮み量となっており、
わざわざ引き伸ばさなくても元々のストロークで足りていたことがわかりました。 |
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ストローク稼ぎで指で伸ばしたベローズ | (使用中)大して縮んでいない・・ |
ステンレス鋼の線膨張係数から温度差による熱膨張量を計算できるサイトがあったので、
液体ヘリウム温度で計算してみたところ、1,000mm辺り4.7mm程縮まるという数値がでてきました。
外管の内、半分の2,000mmが液体ヘリウムに浸かっていると仮定すると、残りの2,000mm分が収縮差としてベローズの動きに反映されると概算できます。
つまり4.7mm×2=9.4mmと計算されます。実測値は6〜7mmの収縮量となっていますので、
液に浸かっている正確な長さや、液に浸かっていない部分でも容器内の気層部分の温度も低いため
外管も縮んでいる事などの条件誤差を踏まえると妥当な数字なのかもしれません。 |
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<シリコンライト栓> トランスファーチューブを液体ヘリウム容器の開口部に固定する継手は、 袋ナットと押さえ金具でOリングを押しつけてシールする様式(ウィルソンシールと言われる)が一般的ですが、 当施設の自作トランスファーチューブには、樹脂製の栓を用いています。 軽量かつ相手開口部の継手形式にとらわれないため便利です。 当初はゴム栓を使っていましたが、最近は柔らかいシリコンライト栓を使っています。 ゴム製に比べてチューブのスライドがスムーズです。 ただし、はめ込む受け側が金属でなく樹脂ホース類のように柔らかい場合は、 シリコンライト栓では柔らか過ぎてはめにくいので、ゴム栓を使っています。 ちなみに、今回製作の6-8mm管は3/8インチ(9.5mm)のウィルソンシールでも使えるのでしょうか? Oリングを適当な厚肉なものに交換して実際にトランスファーしてみたところ、シール漏れも無くチューブの抜き差しも問題なく使えました。 多少のサイズ差があっても汎用性がある事がわかりました。 |
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ゴム栓より柔らかく抜き差しが楽 | 既存のウィルソンシールでも使えた |