<液取り出しのしくみ> 自加圧式容器は文字通り自ら内圧を高めて液体窒素を加圧することで外側へ押し出す事が出来る容器です。 バルブ操作だけで行えます。どのように加圧しているのか液の取り出しのしくみについて下記のスケッチで解説します。 |
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@ | 加圧バルブを閉じている保管時は加圧管の中には内槽底面にかかっている圧力と 等圧の圧縮された窒素ガスが入っていてバランスしています。 | |
A | 加圧バルブを開くと加圧管の中にあった圧縮窒素ガスが内槽へ入り込みます。 同時に液体窒素が加圧管へ流入します。加圧管は断熱材の外側にあるため配管中へ流れ込んだ液体窒素は蒸発します。 | |
B | 加圧管で蒸発した窒素ガスは加圧バルブを通して上部より内槽へ入り込み、内槽の圧力が上昇します。 これにより残液が液取り出し管より押し出されます。 | |
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※スケッチ@では便宜上液体窒素が加圧管へ入っていませんが 実際には少し入り込んでいるものと思われます。 | ||
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<ヘリウム容器との比較> | |
前回切断した液体ヘリウム容器と並べて眺めてみました。
大きな違いは前述の加圧管の存在ですが、それ以外にもところどころ違いが見られます。
それぞれの特徴について比較してみます。 ・ネックの長さ まずネックの長さの差に目が行きました。 見ての通り、外槽と内槽をつないでいるネックの長さがだいぶ違います。 実際に長さを測ってみたところ液体ヘリウム容器は約30cm、液体窒素容器は約13cm ありました。 写真だともっと差があるように見えます。メーカーによっても多少の違いはあると思いますが いずれにしても約2倍以上も差がありました。 ・断熱材のネックへの接続 ネック部を良く見ると断熱材(スーパーインシュレーション)のネックへの接続の仕方が異なっているのがわかります。 液体ヘリウム容器はネックに対してスーパーインシュレーションが垂直に接続しています。 こうすることでスーパーインシュレーションの各シートがネックに接してネックの温度をそのまま断熱層へ伝えています。 一方、液体窒素容器はスーパーインシュレーションの水平面を接続しているようです。 ネックと平行にピタッと巻き付いています。 しかも内槽を巻いているものとネックを巻いているものは一体ものではなさそうです。 それぞれ別なものが巻いてあるように見えます。 |
ヘリウム容器(左)と窒素容器(右) |
ヘリウム容器のネック | 窒素容器のネック |
ヘリウム容器は垂直に接続 | 窒素容器は水平に接続 |
ヘリウムガスは比熱が大きいため蒸発したばかりの冷ガスが持っている熱エネルギーを
取り出す事は残液の蒸発損失を抑えることにとても有効な手段となります。
具体的に言い換えると、容器内のヘリウム冷ガスはたくさん冷気を持っているので、このまま外へ流してしまうような事はしないで
ネック部で熱交換して容器内に冷気を保持させています。蒸発したガスが容器外へ出るときは暖ガス(室温)になっています。
ネックは熱交換するためのスペースで、そしてスーパーインシュレーションは冷気を吸い取る役目をしています。
このためネックは長く、そしてスーパーインシュレーションはそのネックに幾層にも渡って垂直に接続しています。
一方、窒素ガスは比熱が小さいため蒸発したばかりの冷ガスから取り出せる冷気は少なく、 ヘリウム容器のような構造にしても冷却効果が得られにくいものと考えられます。 このためスーパーインシュレーションとの熱交換は考慮せず輻射シールドとしてのみの役割にしてあると思われます。 |
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・内槽の支持 内槽の下に手を入れて確認してみたところ、液体ヘリウム容器には支持具はなく宙吊りの状態でしたが 液体窒素容器には中心に支持具がありました。液体ヘリウムは液密度が小さく(つまり軽い)、また極力熱侵入をなくすため接触点を減らしています。 これに対して液体窒素は液密度が大きく(重い)支持具無しだとネックだけで内槽を支えないといけないため負荷が大きくなってしまいます。 容量が大きいほど負荷も大きくなるので支持具が必要になると思われます。 |
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<切断の様子> 前回カットした液体ヘリウム容器とは基本的には同じ構造ですが断熱材の外側に加圧管が巻かれており、 これを形状を維持したまま残せるよう注力しました。かなり手強かったですが労力に見合うだけの素晴らしい標本が得られました。 順を追って切断過程を記録していますのでご参考ください。 ※軍手を着用してサンダーを取り扱っておりますが、これはやってはいけない行為であると判明しました。 回転する電動工具を扱う際、巻き込まれる可能性があるため厳禁行為に当たるそうです。写真掲載に当たり危険行為(悪い見本)であることを記します。 |
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外槽切断 | |||
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スーパーインシュレーション切り取り | |||
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内槽切断 | |||
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カットモデルは極低温室に保管してありますのでご興味のある方はぜひ実物を見にいらしてください。 なお担当者が不在の場合は誠に恐れ入りますが事故防止のため立ち入りはご遠慮ください。 |