光物性・量子伝導 究室
(2006年5月30日 更新)

量子伝導グループ担当
みなさんこんにちは
(おと  けんいち)
音 賢一
居室: 理学部2号館 4階 407室
    (サイエンスプロムナードのある建物)

電話: 043−290−2761

Email: oto[atmark]physics.s.chiba-u.ac.jp

〒263−8522 千葉市稲毛区弥生町1−33 千葉大学理学部物理学科 
自己紹介

皆さんこんにちは。私たちは、半導体中の量子伝導(小さな所に閉じこめられた電子が運ぶ電流のおもしろい性質)の実験的研究を行っています。この研究には、半導体の極微加工、極低温技術、強磁場、微小電流・電圧計測など様々な工夫を組み合わせて行っています。研究室ではこれらを、光量子エレクトロニクス、光物性分野の研究にもジョイントして、新しい実験方法による物性物理学の研究にチャレンジしています。 また、大阪大学、東京大学物性研究所など、千葉大学内外の研究グループとも協力して研究を進めています。


得意技は
各種工作で、要るものはすぐ作ろうがモットーです。木工、金工(旋盤・フライス加工他)、銀ロウ付け、TIG溶接、電弧溶接、電気回路工作、簡単なガラス工作、 など何でもやります。(ただし、仕上がりは保証外)

主な研究内容 (概略です。)
電線を流れる電流について考えると、通常電気抵抗は電線の長さに比例して大きくなり、このときの電圧、電流、抵抗の関係は、有名なオームの法則 V=I・R で表されます。

ところが、電子を非常に狭いところに閉じこめた場合の電気伝導では、必ずしも「常識」が通用せず、おもしろい性質が顔を出してきます。 
これは、電子が閉じこめられたことで、

 次元性: 「閉じこめ方」 平面=2次元、 極細線=1次元、 ドット=0次元

 電子の波としての性質: 波の干渉による強め合い、弱め合い

 電子のエネルギー: 閉じこめられたことで特有の(とびとびの)エネルギー準位ができる

などが電気伝導に直接影響をすることによって生じます。 さらに、「電線」のサイズを小さくして、ある物性を決める特徴的な長さ(例えば電子の平均自由行程)よりも小さな試料を作りその電気伝導を調べてみると、通常なら表に出ない試料の個性(例えば、僅かに残った不純物がどこに、どれだけあるかなど)が強く表れたり、逆に試料形状や物質の種類に依らない普遍性(抵抗値がサイズに依らず一定値となるなど)が出てきます。

これらの現象は古典的な取り扱いではなく、電子が「粒であり波である」性質と、閉じこめられている条件を考慮して理解しなければならない「量子伝導現象」です。
私たちのグループでは、この量子伝導に現れる様々な特性と電子の閉じ込めとの関係を実験的に詳しく調べています。また、これらの研究分野は、半導体などの極めて順良な結晶作製とその極微細な加工・取り扱いの技術とともに著しい発展をしてきました。この技術を活用して新しい研究テーマにも取り組みます。

(1)量子ホール効果での電気伝導
 半導体中の電子を平面内に閉じこめた、「2次元電子系」に強い磁場をかけると、量子ホール効果が現れます。 これはホール抵抗が h/Ne2 (Nは整数)に量子化される著しい現象です。このときの電気伝導を担っている電子状態の一つに、試料の端に沿った1次元の電子伝導路である「エッジ状態」があります。エッジ状態にある電子による伝導を詳しく調べることで、これまで実験的な手段に乏しかった、「試料境界での電子散乱」や「電子の閉じこめポテンシャル」についての研究が可能になります。例えば、半導体素子のサイズはどんどん小さく細くなっていますが、ここでの電子は試料境界を強く感じながら伝導しています。同じ線幅でも緩やかに閉じこめられているのか、急峻なポテンシャルで閉じこめられているかでは、電気伝導にも違いが生じます。これまでの私たちは量子ホール効果でのエッジ状態について2次元電子系と金属ゲートとの間の電気容量を測定する方法で研究できることを見い出しました。これをもとに、半導体中の電子が感じる閉じこめポテンシャルと電気伝導について以下のような研究を行っています。

 ・ 量子ホール状態での伝導と2次元電子系の乱れについて 
 ・ 試料端閉じ込めポテンシャルの空間分布
 ・ エッジ状態の微細な構造
 ・ 線幅に依存しない量子ホール効果のブレークダウン
 ・ サブミクロン細線ゲートによるエッジチャネルの可視化と閉じこめポテンシャルの制御

2次元電子系と金属ゲート間の電気容量。量子ホール効果のとき、電気容量はエッジ状態の面積で決まる極小値となる。測定温度は30mK。 研究室で作っている測定用試料の例。半導体微細加工技術を駆使して、自在な形を作り、極微の世界の電気伝導を探る。
(2)AFM局所陽極酸化法による極微加工された2次元電子系の電気伝導
 原子スケールのサイズで位置を制御できる針を持つAFM(原子間力顕微鏡)を使い、試料と針の間に電圧を加えることで試料表面をナノメートルのスケールで酸化・加工できます。このページの先頭にある「研」はこの方法で書いたもので、文字の線幅は40nm、文字全体は450nmです。さて、これらの方法を用いて電子波の波長程度のサイズで電子が感じるポテンシャルを作ると、電子のエネルギーが変調を受け、いろいろな性質が電気伝導に顔を出します。電子がほとんど散乱を受けないバリスティックな性質と、散乱を受けて特定の場所に電子が局在するという、一見して反対の性質が共存したりする2次元電子系の電気伝導を研究する上で面白い舞台になる可能性を持っています。

 ・ AFM陽極酸化法によるナノデバイスのバリスティック伝導

 ・ 斜め強磁場下のWeiss振動と平行磁場によるフェルミ面の歪みの関係

AFMによる微細加工の原理図。試料表面にある吸着水の電気分解で、プラス側の試料表面が部分的に酸化されることを利用している。

下図はAFM本体と、針(プローブ)の拡大図。

AFMで加工した試料表面。周期300nmの洗濯板状のポテンシャルを電子が感じて、抵抗の磁場依存性に特徴あるパターン(Weiss振動)が表れる。
(3)極微電極、極微マスクによるナノ構造物質の物性
近年、いろいろなナノサイズの構造をもった物質が作られていますが、その電気伝導特性を調べるためには、電極も極微小なものが必要で、測定にも微少電圧・電流をノイズに負けないで観測できるような工夫が不可欠です。

また、極微構造をもつ結晶の局所的な光特性を調べるため、1ミクロン以下の開口をもつマスクを作り、その部分からだけの発光をしらべることができます。特別な工夫をした結晶成長法で作られた量子ドットや量子細線などの局所的な発光から個々の構造についての詳細な研究が行えます。

現在、極微電極や微小開口マスクを用いた研究を行っています。(大阪大学との共同研究)

左右から中央に伸びている白い部分が金属の極微電極。中央の細くなった部分の真ん中で幅400 nmの隙間がある。測定するものをこの隙間の上に載せて電気伝導を測定する。 半導体結晶の上に作った隙間500 nmのスリット。スリット以外の場所は金属膜で覆われている。量子細線構造をもつ半導体のスリット状の窓が開いている部分からの発光を調べた。

主な研究設備 以下の装置で実験を進めています。
(1)低温・強磁場下の電気伝導測定装置

1.3T水冷電磁石、14T超伝導電磁石、18T超伝導電磁石付きトップロード希釈冷凍機(30mK)Heワンショット冷凍機 (0.4 K)、交流抵抗ブリッジ、インピーダンスアナライザー、LCRメータ、半導体パラメターアナライザ、ほか 

(2)試料作製・微細加工装置

真空蒸着器、超純水製造装置、DeepUVクリーナー、スピンレジストコーター、電子ビーム露光装置JSM6500F-CPG1500、紫外線マスクアライナー、超音波ボンディング装置、電気炉

(3)そのほか

原子間力顕微鏡NS-IIIa+MMAFM(加工機能)、走査型電子顕微鏡JSM6400(自作簡易露光機能)、金属光学顕微鏡(ノマルスキー)

16−18T超伝導電磁石、トップロード希釈冷凍機。30mK程度の極低温に試料を冷却して、強い磁場のを加えたときの電気伝導を調べる。試料は長ーい棒の先にセットしてあり、装置が冷えているときでも出し入れできるので試料交換が簡単に可能。 電子ビーム露光装置。微細部分から大きなマスクまで自由に描画できる。もちろん、観察用の電子顕微鏡としても利用できる。 紫外線マスクアライナー(露光装置)。写真の原理を使って自在な形を加工するための装置。原板となるマスクは左の電子ビーム露光装置で作る。