対面の場合、理学部2号館703室や物理会議室などで実施しています。
アクセスについては千葉大キャンパスマップ を参照ください。
- 小野 凌太 氏(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター) 2025年12月9日13:30から理学部2号館703室
現実的Hubbard模型に基づく一般化されたKatsura-Nagaosa-Balatsky理論とその応用
マルチフェロイクスとは、絶縁体中で電気分極と磁気秩序が共存する物質群の総称であり、基礎物性およびデバイス応用の両面から活発に研究されている。これらの系では、磁気構造が起因して電気分極が誘起される電気磁気効果が中心的な役割を果たす。Katsura–Nagaosa–Balatsky理論[1]に代表される現象論的な枠組みは、この効果の理解に広く用いられてきたが、一般的なスピン構造に対して電気磁気効果を正確に記述する微視的有効スピン模型は、これまで系統的には構築されてこなかった。
本講演では、固体内の電気分極の一般式[2]から出発し、第一原理電子構造計算から構築した現実的ハバード模型に対する強結合展開を用いて、電気磁気効果の厳密かつ第一原理的な有効スピン模型を導出する枠組み[3,4]を紹介する。さらに、この枠組みを古典スピン系および量子スピン系の磁性体に適用した具体例を示し、既知の電気磁気応答の理解だけでなく、新たな創発的電気磁気現象の可能性についても議論する。
参考文献:
[1] H. Katsura, N. Nagaosa, A. V. Balatsky, Phys. Rev. Lett. 95, 057205 (2005).
[2] R. D. King-Smith and D. Vanderbilt, Phys. Rev. B 47, 1651(R) (1993).
[3] R. Ono, S. Nikolaev, I. Solovyev, Phys. Rev. B 102, 064422 (2020).
[4] I. Solovyev, R. Ono, S. Nikolaev, Phys. Rev. Lett. 127, 187601 (2021)
- 古谷 祐斗 氏(岡山大) 2025年11月10日15:30から理学部2号館703室
Ginzburg-Landau theory of spin pumping through an antiferromagnetic layer near the Néel temperature
スピンポンピングは新しく簡便なスピン流の生成手法であり、これまで、強磁性体/非磁性金属という2層構造に対して盛んに実験されてきた[1]。一方、反強磁性スピントロニクスの発展に伴い、強磁性体/反強磁性体/非磁性金属という3層構造に対するスピンポンピングの実験も多数報告されている[2, 3, 4]。
今回我々が注目する文献[4]では、YIG/CoO/Ptの3層構造に対してスピンポンピングの実験が行われ、反強磁性層(CoO)を介したスピンポンピング信号が、反強磁性層(CoO)のネール温度付近でピークを持つことが報告された。また、より重要な点として、ネール温度付近の(強磁性共鳴の吸収強度で規格化された)スピンポンピング信号が、強磁性共鳴に利用されるマイクロ波の周波数の大きさに強く依存することが挙げられる。先行理論研究では、スピンポンピング信号と反強磁性層のネール温度の関係を説明したいくつかの論文は報告されてはいる[5, 6, 7]が、それらは、スピンポンピング信号とマイクロ波の周波数の関係について言及していない。
そこで本発表では、ネール温度付近の反強磁性体を適切に記述できる時間依存Ginzburg-Landau理論を用い、強磁性体/反強磁性体/非磁性金属という3層構造でのスピンポンピングを理論的に考察した結果[5]を報告する。特に、強磁性体/反強磁性体界面での交換結合の状況(本発表では、magnetic couplingとNéel couplingと呼ぶ)に応じて、ネール秩序変数の揺らぎがスピンポンピングに大きく影響することを示し、スピンポンピングとマイクロ波周波数の関係について言及する。
[1] E. Saitoh, et al., Appl. Phys. Lett. 88, 182509 (2006).
[2] H. Wang et al., Phys. Rev. Lett. 113, 097202 (2014).
[3] L. Frangou et al., Phys. Rev. Lett. 116, 077203 (2016).
[4] Z. Qiu et al., Nat. Communs. 7, 12670 (2016).
[5] Y. Furutani et al., Phys. Rev. B 112, 174416 (2025).