利用成果
 
今回製作した液体ヘリウム移送管は、性能の項で考察したように移送効率がとても優れています。これは少量移送においてその効果を抜群に発揮します。この特徴を生かし、実験装置への充填に実際に利用され成果を出しています。

【NMRへの液体ヘリウム供給】
NMRへは液体ヘリウムが枯れることの無いよう定期的に充填する必要があります。充填時は液体ヘリウムの蒸発を伴うため内部の圧力が上昇します。装置の特徴上、圧力の上昇は好ましくなく、充填作業には細心の注意が必要とされています。以前まで液体ヘリウム充填時は圧力の上昇を少しでも軽減するため、排気口を配管から外し蒸発ガスを大気中へ放出していました。ご承知の通りヘリウムガスは非常に高価であり、この放出分をどうにか回収できないかという事が課題でありました。そこで装置付属の移送管から製作品の移送管へ切り換え、更に充填時は配管径の太いバイパスチューブを回収ラインに利用することで、蒸発ガスの回収が実現しました。しかし他大学の様子を聞くと装置付属の太い移送管を使用している状況下でも蒸発ガスの回収は行われているようです。ただ装置が不具合を起こすリスクを少しでも回避できるのであるなら、移送時間は多少かかりますが安全・安心を優先させたいと考えております。
NMRへの液体ヘリウム充填の様子 新設した蒸発ガス回収配管