トランスファーチューブ製作」の延長ということで、サイズを変えて製作しました。 当初製作は 内管外径3.0mm-外管外径5.0mm でしたが、これを製法はそのままにサイズだけ拡大して

 ・内管外径4.0mm-外管外径6.0mm
 ・内管外径9.0mm-外管外径12.0mm

を製作しました。写真を見ての通りかなり大きいです。これは期待が持てます。


<移送性能の比較>
試験的に100L容器から100L容器へ移送を行い、移送速度と浪費率(使用量/充填量)のデータを収集したので整理してみました。

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図1:充填量-移送速度 space 図2:充填量-浪費率


サイズによる移送性能の比較
サイズ 平均移送速度
(L/分)
平均浪費率
(L/L)
3-5mm 1.05 1.13
4-6mm 2.24 1.19
9-12mm 4.60 1.30

図1:充填量-移送速度
内径が大きくなると流量断面積も増えるので移送速度も当然大きくなっています。
しかし、9-12mmチューブに関しては期待していたよりも移送速度は小さかったです。 実は10L/分を超える速度が出るかと期待しておりました。 原因としては内径が大きいので、それ相応の加圧が必要なのに、うまくできなかった事かと思われます。 通常加圧に使うバルーン(ガスバッグ)での手動加圧では全く加圧できず、ガスボンベを使いました。 レギュレーターから流音が聞こえるほどの勢いで流しましたが、それでも加圧不足のようです (容器付属の圧力計で0.1bar程度にしかならない)。 もう少し流量のあるレギュレーターが必要かもしれません。
4-6mmチューブに関しては逆に思っていた以上の移送速度が出ています。 内管が3mmから4mmへ1mm増えただけで2倍以上の速さが得られています。

図2:充填量-浪費率
内径が大きくなれば無駄な蒸発が大きくなると予想されましたが、 4-6mmチューブについては蒸発量が小さく、上辺ですが3-5mmチューブの青い帯の中に入り込んでいます。 やはり蒸発ロスの小ささは、このトランスファーチューブの一押しの特徴だといえるのかもしれません。
9-12mmチューブは流量がものすごく、蒸発ガスを回収する配管の液体空気の滴下は、 通常貯槽から100L容器に汲む内径4mmの既製品でのトランスファーで満タンのサインである滴下具合の 勢いをはるかにしのぐ勢いでジャバジャバ流れていました。移送速度が速くなると蒸発も相当に起こっているようです。

9-12mmチューブに関しては太いこともあり、フレキ性が損なわれ使い勝手が良くありません。 また、表面積が大きいためなのでしょうか、輻射熱によると思われるチューブ全体の結露が移送中に見られます。 一方、4-6mmチューブについてはフレキシブルで使い勝手の良さは3-5mmと全く変わりません。 性能を加味すると一般利用については4-6mmチューブはかなり汎用性が高いといえそうです。 NMRなど繊細な装置は3-5mmチューブで慎重に充填するのが良さそうです。




<Wトランスファー>
3-5mmトランスファーチューブを2本同時に使用して移送を行ってみました。 この場合、浪費率はそのままで移送速度が倍になるかどうかという事が気になります。


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図3:充填量-移送速度 space 図4:充填量-浪費率


1本と2本同時使用の移送性能比較
サイズ 平均移送速度
(L/分)
平均浪費率
(L/L)
3-5mm 1.05 1.13
3-5mm
2本同時使用
2.00 1.11

図3:充填量-移送速度、 図4:充填量-浪費率
珍しく期待通りの結果が出ました。移送速度に関しては1本使用でのほぼ2倍の速さで、 浪費率は3-5mmチューブのクオリティがそのまま反映されてます。すばらしいです。
ただ、残念ながら実務的には全く実用性がありません。 これは2本のトランスファーチューブがそれぞれ微妙に冷却される時間がずれるため、 受け容器側への挿入の難易度が高いからです。つまり一方が液が出てきているのに、 他方がまだガスしか出ていない状況が起こります。これは焦ります。 これだったら4-6mmチューブ1本使用の方が断然いいです。 ※この試みは4-6mmチューブを製作する以前に行ったものです。