先日、久しぶりにトランスファーチューブを製作しました。 製作の際、図面や製作手順などは以前まとめた資料を参考にしましたが、 今読むと少し分かりづらく、仕様も少し変化しているので、資料として不十分に感じました。 また、何件か「作ってみたい」との問い合わせもいただいた事があったので、ここで改めて整理し直す事にしました。 今後の自分自身への資料として、また新たに製作する人が出てきた際に参考にしてもらうため、 なるべく丁寧に製作手順を再整理しましたのでご紹介いたします。

<構造>
Heトランスファーチューブとは液体ヘリウムを貯蔵容器等から装置等へ移し替える移送管の事です。 液体ヘリウムは温度が非常に低いため、断熱措置をしてやらないとすぐに蒸発してしまいます。 そのため、移し替える際には専用の移送管が必要になります。
構造はステンレスパイプを二本重ねて、内管と外管の間の空間を真空にする事で断熱を保つ構造になっています。 液体ヘリウムが内管に流れると内管は冷却されて縮む(熱収縮)のに対して、外管は室温と同じなので縮みません。 そこで外管の途中に伸び縮みするベローズを挿入しています。 また、ベローズをつないでいる部分に真空引き口も設けています。 真空引き口については、以前はシール栓とそれを受ける筒状の開口部を製作していましたが、 製作を容易にするため既製品のボールバルブを用いました。
構造図
 
No. 部位 備考
1 内管 全長4メートル
2 外管 左右2メートルずつ
3 ベローズ 内管の熱収縮分をここが縮んで対応します
4 外管-ベローズ接続部 ベローズの支えとして内側に入り込み、外側には真空引き口を設けます
5 外管-ベローズ接続部 ベローズの内側に入り込みますが、ベローズ収縮時に部品4に引っ掛からないように、常温時も4の内側に少し入り込んで重なっています
6 真空引き口 既製品を流用します(1/8オスメスソケット)
7 外管-内管接続部


<材料>
材料を下記一覧表に示します。 外管と内管にはサイズに応じて組み合わせがありますが、ベローズや削り出す真鍮棒の母材サイズは共通です。 なお、内管は全長4メートルの一本ものがあれば、継ぎ合わせ加工をしなくて済むのでリーク(ガス漏れ)のリスクと製作の手間が省けます。

材料名 サイズ 数量 備考
ステンレスパイプ
(内管)
肉厚0.15〜0.2mm ×長さ2m
※外径は下表参照
2本 2本継ぎ合わせよりも、長さ4mの
一本物があれば、その方が良いです
ステンレスパイプ
(外管)
肉厚0.15〜0.2mm ×長さ2m
※外径は下表参照
2本 肉厚は薄い方が良く、厚い場合は
焼鈍してあると良いです
真鍮丸棒
(ベローズ接続部)
外径20mm ×長さ150mm 1本 長さは切り代と保持代も含めた概算
真鍮丸棒
(外管-内管接続部)
長さ50mm
※外径は外管サイズに合わせる
1本 長さは切り代と保持代も含めた概算
燐青銅ベローズ 外径19mm ×肉厚0.14mm
×山数19
1個 端部形状AA型、またはCC型
参照:久世ベローズ
ねじ込み継手 雄ネジ1/8 = 雌ネジ1/8 1個 1/8オスメスソケット
ボールバルブ ネジ R1/8 = チューブ 6mm 1個 ピスコ BVC01-6
てぐす(釣り糸) 太さ4.0号 33m 50m巻で1.5本使えたので、
逆算すると1本あたり33m程


内管と外管のサイズの組み合わせについては、外径2mm差の組み合わせで製作しています。 外径1mm差の組み合わせでは、内管と外管の間の挿入スペースが狭過ぎて製作できません。

組み合わせ
実例
内管外径
(mm)
外管外径
(mm)
備考
@ 3 5 最も多く作ってきたレギュラーサイズ
A 4 6 移送能力の増強を図った中型サイズ
B 6 8 今回製作!フレキ性を失わず実用性を備えた限界サイズかも?!
C 9 12 太過ぎてフレキ性に乏しく実用性がありませんでした


<資料>
3×5管-部品図面
4×6管-部品図面
6×8管-部品図面
製作手順