NMR(核磁気共鳴装置)への液体ヘリウムの供給を業者納入から学内供給へ切り替えた当初から課題であった充填中の
蒸発ヘリウムガス回収について、回収を実現させた工夫を紹介します。 また、対象NMR台数を順次増やしてきましたが、全4台に供給することとなり回収率について 正確にカウントできるようになりましたので、回収状況についてご報告いたします。※回収メーターがNMR4台で一緒になっている ため、今までは一部業者が供給していたNMRの蒸発ガスもカウントされていて正確な回収率を算出できていませんでした。 未回収・回収それぞれの特徴 まず、蒸発ガス放出時と回収時について改めてそれぞれの特徴を整理してみます。
内圧上昇抑制@:回収管径を増大 平常時の自然蒸発に対し充填中は、蒸発量が増加し回収管中の圧力が大きくなります。 そこで回収管の径を大きくして対応しました。この背圧を少しでも抑えることは移送速度を維持することにもつながります。
内圧上昇抑制A:トランスファーチューブを変更 前報告「NMRへの液体ヘリウム学内供給開始」および 「Heトランスファーチューブの製作」でも触れていますが 内管径の細いトランスファーチューブを自前で製作しこれを応用しました。 このトランスファーチューブは内径が小さいため移送量が少なく移送速度が出ません。つまり充填作業時間がかかります。 しかし移送量が少なく静かに汲むことは蒸発ロスを減らし内部圧力の上昇を抑制したい今回の状況にピッタリでした。
移送状況 さて、実際の移送状況はどうなのか、データが増えてきたので、整理してみました。
回収状況 回収配管を敷設して以来のヘリウムガス回収率の推移をまとめてみました。敷設当初は自然蒸発のみの回収でした。 業者の充填に立会いながら充填の方法を教えていただき、NMR1台の充填から学内供給が始まりました。 その後、最も大きい600MHz(ECA600)を除く3台を引継ぎ、2006年12月より充填方法を見直し、充填中の回収を実現させました。 これにより回収率が飛躍的に向上しました。最終的に2008年03月より最後まで業者が担当していた装置(ECA600)を引き継ぎました。 この装置は他の装置よりも充填量が2倍近いため、回収率がさらに大きな幅で向上しました。
ヘリウムガスの回収にこだわることで、移送速度は低下し、作業時間長くなりました。これはヘリウムガス回収の代償ということになりますが、 貴重資源であるヘリウムを回収・再利用できるのであるならば安い代償といえましょう。 学内では回収配管の敷設がされていないNMR装置がまだあります。配管敷設が進まない原因は 「配管設置費用の負担」および「学内供給での安全性」が壁となっているようです。 「学内供給での安全性」については、今までの供給実績に加え今後も引き続き安全に供給すること、 そして回収率の維持により信頼を積み重ねていきます。 |