極低温室では平成21年度予算にてヘリウム液化機の更新工事が行われます。 14年間(1996.03-2009.12)稼働し、その役目を終えた液化機の労をねぎらい 運転における特徴や出来事などを整理してみました。

<機器のラインナップ>
下写真はヘリウム液化装置を構成する主要機器です。 これ以外にも中圧乾燥機、リカバリータンクなど様々な機器から構成されています。 平成7年度導入後、途中液化用圧縮機の増設などありました。 どの機器も経年劣化と思われる能力低下が見られ、09年夏以降その傾向がさらに顕著になりましたが なんとか需要に応えてくれました。

ヘリウム液化機
PSI M1610

液化用圧縮機
PSI RSJ

回収用圧縮機
東亜潜水 YS-85V

液体ヘリウム貯槽
CRYOFAB CMSH-500 

長尺ボンベ
470m3 

液化機 PSI-M1610 40L/h
液化用圧縮機 PSI-RSJ 325m3/h
回収用圧縮機 東亜潜水YS-85V 36m3/h
液体ヘリウム貯槽 CRYOFAB 500L
長尺ボンベ 470m3 (40m3×8、75m3×2)
ガスバッグ 15m3 (10m3、5m3
バッファタンク 4基合計 4.375m3
中圧乾燥機 MGDS-48 1,040Nm3
油水分離機 OWRS-7.2-CHF
液体窒素貯槽 CE-5 5,000L


<運転状況の変遷>
右下グラフの平均液化速度の年別の推移を見ると2005年に落ち込みが見られます。 この落ち込みを除くと大局的にみて緩く低下していく傾向が見られます。 年々の液化速度の低下はやはり老朽化による性能劣化/能力低下と考えられます。 2005年の落ち込みは、運転状況によるものと考えています。 2005年の運転状況は一回の運転が短く、液化量の少ない運転を高頻度で行うスタイルでした。 これは朝起動して夕方停止する極一般的な運転スタイルです。 この運転スタイルを2006年から見直し、なるべく長時間運転・大量液化・低頻度へシフトしました。 これにより平均液化速度が20.0L/h以上まで回復しています。 一回の運転での平均液化量をこのグラフに重ねてみますと上記考えを裏付けるように 2005年は同期して液化量が少ない年となっています。 2007、2008、2009年と液化量250L以上と、更に長時間・大量運転を推し進めていますが、 残念ながら平均液化速度はゆっくり低下しています。 老朽化による液化能力低下の傾向を長時間・大量運転によって、なんとかこの幅で抑えることができたと解釈すべきでしょうか。 更にこれに平均液化時間(液化が始まってからの定常運転の時間)を加えてみました。 2005年だけが突出して少なくなっているものと思っていましたが、 2004年は2005年を下回る少なさでした。 残念ながら上述の考えを裏付けるデータとは成り得ませんでした。
 2009運転データ
年間液化量  23,883 L
年間供給量  17,843 L
有効利用率(供給量/液化量)  74.7 %
年間稼働時間  1,702 h
平均液化速度  16.5 L/h
平均液化量  268.3 L
平均消費電力量  66.1 kWh
年間運転回数  89 回

年別データ 年間稼働時間
(h)
年間液化時間
(h)
稼働時間に占める
液化時間の割合(%)
平均液化量
(L)
平均液化速度
(L/h)
2002 691 499 72.21 181.50 21.8
2003 718 529.1 73.69 225.60 24.3
2004 1,005 652.6 64.94 153.88 22.0
2005 1,312 947 72.18 120.08 16.9
2006 1,185 914 77.13 175.31 20.7
2007 1,075 875.4 81.43 256.52 20.2
2008 1,308 1,110.9 84.93 274.96 18.4
2009 1,702 1,486.6 87.34 268.26 16.5

液化機は起動後すぐに液体ヘリウムが出るのではなく、液化機内部の冷却過程を経て液化が始まります。 冷却過程は概ね2〜3時間ほどです。右図は稼働時間に占める液化時間の割合で年々増えているのがわかります。 つまり前述のように長時間運転を推し進めている様子が見えます。 「2005年に平均液化速度が落ち込んでいるのは短時間運転が影響しているためで長時間運転へ切り替えてから 平均液化速度は回復した」という考えを主張してきましたが、これを裏付ける資料として作成してみました。 しかしまたしても予想に反して稼働時間に占める液化時間の割合は2005年ではなく2004年が65%と傑出して小さな値となっています。 これは困りました。どのように解釈していいのかわかりません。なかなか意図している通りに行かないのは残念です。
隙間
右図は個別の液化速度の推移状況です。 上述の通り2005年頃に20L/h未満であったのが2006年春頃から20L/h以上に上昇しています。 その他で特徴的なのは2009年春に30L/hに迫る能力を出し絶頂期を迎えています。 しかしその後秋から15L/h前後まで急激に調子を落としています。 最終液化運転まで残り3カ月というタイミングでしたが能力低下があまりにも厳しいため 液体ヘリウムの供給停止/オーバーホールに踏み切り、クリーニング・消耗品の交換を行いました。 その後やや調子を戻しましたがやはり老朽化の影響なのか2009夏以降20L/hを越えることはありませんでした。 まるで設備更新が行われることを察知したかのような不調ぶりで何ともやりきれない気分になりました。 最後の最後まで手がかかるなぁと思いつつオーバーホールすることは実は嬉しいことでした。 隙間
液化速度の算出方法は単純に液化量を液化時間で割ることで算出しています。 例えば液化量200L、液化時間10hであれば200÷10=20L/hとしています。 液化運転の途中で汲み出しがあった場合は汲み出しに伴う蒸発ロスを汲み出し量の0.2倍、 基準液化速度を20L/hとし、この蒸発ロス分を時間ロスとして補正計算しています。 例えば、小型容器に80Lを3回汲んだ場合は途中汲み出し合計240Lで、240×1.2=288L使用とし 288-240=48L分 余計に蒸発させているので48L分の液化時間を時間ロスとしています。 つまりこの3回の汲み出しがなかったならばこの時間ロス分速く液化運転が終了できたという考えです。 時間ロスは48L÷20L/h=2.4hとなります。液化時間が20.0hだとすると20.0-2.4=17.6hと液化時間を補正します。 液化量が350Lだったとしますと350/17.6=19.88L/hとなるわけです。 ただし、汲み出しにかかる蒸発ロスを汲み出し量の0.2倍、時間ロスの計算に使う基準液化速度を20L/hと 仮定していることから補正計算は近似的で正確なデータは取れない状況です。 上図では途中汲み出しが一切ない運転データのみ(推定値データを排除して実測データのみ)を選んでプロットしてみました。 図の右側でデータ数が多く密度が高いのは2007.10以降バルブのクリアランス操作実験やエンジン回転数操作実験を行ったこともあり、 運転データ取得の条件として運転途中での液体ヘリウムの汲み出しを避けたからです。


<運転における特徴>
・エンジン回転数の手動設定化-オーバースピードトリップの回避
エンジン起動時に自ら速く回り過ぎて規定回転数上限を超えて安全停止機能が働いてしまいます。 当初からあった現象のようで私が最初に習った運転手順では起動時にフライホイールを手で押さえて回転数を抑制するという 非常に荒っぽく危険なことをしておりました。今は回転数をオートモードからマニュアルモードにして低い値を指定することで回転し過ぎを回避しています。 マニュアルモードで回転数をコントロールできていることからブレーキは機能しているようです。


・JT弁の初期開度の手動化-貯槽圧の上昇抑制
液化機を起動後、内部が冷却されていきある部位が設定温度に達する(TE-A=200K)と 液化機と貯槽を仕切っているJT弁というバルブが開きます。 JT弁が開くと液化機から貯槽へ冷却途上のヘリウムガスが流れ込みます。 貯槽から見ると流れ込んでくるこのヘリウムガスは温度が高く、貯槽内の液体ヘリウムを蒸発させます。
液化機と貯槽をつないでいる移送管は3層構造になっており、最内層が液化機からの送り出しライン、 その外側が液化機への戻りライン、最外層が断熱のための真空層となっています(真空断熱三重管)。 蒸発したばかりのガスは非常に冷たく、戻りガスとして液化機へ戻った後、熱交換器での冷却に利用されます。 当初勉強不足もありこの効果を理解しておらず、貯槽の液を使い過ぎた事がありました。 貯槽残量がわずかな状態から液化機を起動してもなかなか予冷が完了せず、液化機が壊れたのかと思ってしまいました。 「液化不能によるHe利用停止」宣言までして大騒ぎになりました。 この時は100L小型容器から貯槽へ普段とは逆移送して液量を増やしてやり事無きを得ました。
この液化機の運転では各段階においてバルブの開閉や温度コントロールなどを自動で制御してくれるオートモードがあります。 しかし必ずしもこのオートモードが最適化されているわけではないようで、手動による調整が必要な場面があります。 TE-A=200K到達でのJT弁を開く動作ではバルブの開度が大き過ぎるようで貯槽内圧が急激に上昇します。 オートモードのままにしておくと貯槽内圧が上昇し続け安全弁から噴出してしまいます。 このためJT弁の開度を少し締めて微調整しています。締め過ぎると流量不足で冷却能力が落ちてしまうので、 貯槽内圧を確認しながら、開度調整を行なっています。 原因として考えられるのは、この液化機に対して貯槽のサイズ500Lが小さ過ぎるのかもしれません。 つまりJT弁からの熱いガスの流入量に対する蒸発ガスの膨張を緩衝させる容量が足りないのかもしれません。 隙間
貯槽の内圧計 [単位:psi]
この液化機は起動時に不具合(オーバースピードトリップ、圧縮機のオーバーヒートなど)でエンジンが停止した場合には JT弁が開くような設定になっているようです。この場合、ほとんど室温に近いヘリウムガスがドッと貯槽に流入するため 激しく貯槽内圧が上昇します。 採用当初、こういった特徴を知らず貯槽内圧を上昇させ安全弁から激しく噴出させてしまい、ものすごく動揺したことを思い出します。



500L貯槽にも特徴的な現象があります。 液化運転していない状態での小型容器への汲み出し(トランスファー)は通常 ヘリウムガスを貯槽へ送り込んで加圧して汲みますが、この加圧はトランスファー終了まで続けることはなく途中で止めています。 小型容器の残量から大体の予想終了時刻を計算しておき、その時刻の10分ほど前には加圧を止めます。 圧力によって液を押し出しているので、加圧を止めると圧力を消費して貯槽内圧は落ちていきます。 しかし落としたはずの貯槽内圧がトランスファー終了後にゆっくり上昇し続けて安全弁からヘリウムが噴出してしまう事があります。 これはどういうことなのでしょうか。 加圧したことによって貯槽内の液体ヘリウムの沸点が上昇します。加圧を止めると内圧が降下し沸点も落ちるので その分貯槽内の液体ヘリウムが蒸発します。この蒸発によって内圧が押し上げられているのでしょうか。 トランスファー終了後は貯槽内圧に注意が必要で、食事直前や帰宅直前のトランスファーはなるべく避けるようにしています。
この現象を逆手にとって立て続けにトランスファーすると無加圧で汲めたりできます。 次に汲まない場合は早めに加圧を終了しておいて、トランスファー終了時での貯槽内圧を平常時よりもやや低い圧まで落すと 程よく余裕がありベストです。 しかし、トランスファー終了前の加圧停止も早過ぎると、後半圧不足で移送速度が落ち、トランスファー時間が長くかかってしまいます。 移送時間が長引くと蒸発損失もその分増えてしまいます。 加圧加減、加圧停止のタイミングともに難しいところです。
もう一つこんな現象もあります。 トランスファー終盤に加圧を止めたにもかかわらず、貯槽内圧が下がらずにどんどん上昇することがあります。 安全弁から噴出しそうなほど上昇し続ける場合は圧を抜いて対応するしかないです。 これはどういう現象なのか良くわかりません。何らかの原因で液体ヘリウムが過剰に蒸発し続けているのでしょうか。 トランスファーに費やす圧力消費での減圧効果よりも蒸発による加圧効果の方が勝っているということなのでしょうか。


・内部精製器冷却過程の工夫
内部精製器の冷却過程は流量の多いV603(下図参照)を経由するラインで行なわれ、 冷却が完了すると流量の少ないV602を経由する定常ラインに切り替わります。 この定常ラインに切り替わった段階で、せっかく冷却した内部精製器が昇温してしまう場面があります。 当初この現象は運転過程での一場面であって、まぁこういうものなのだと思い込んでいましたが、 ヒーターの故障により、内部精製器の冷却過程を見直す場面があり、 そこで昇温させることのない効果的な操作を発見するに至りました。 温度上昇の原因は、@内部精製器が十分冷えていない、A冷媒であるガスの流れが停滞する場面がある の2点です。
@内部精製器の冷却は温度センサー(下図:TE-C、TE-D)で測り、ある到達温度(TE-C=220K、TE-D=26K)で冷却過程を完了します。 しかし、この後の過程でガスの流れが止まってしまうと温度がみるみる上昇してしまいます。 これはおそらく内部精製器にはある程度の熱容量があり、温度測定部位が到達温度まで冷やされていても、 本体全体はまだ冷え切っていないものと考えられます。 そこで冷却する過程において、冷媒のガス流量を減らします(下図:V635を絞る)。 すると冷却速度が遅くなり、ゆっくり時間をかけて冷えていきます。 これにより内部精製器全体が芯から冷え、ガスの流通が止まっても温度上昇を抑制する効果が得られます。

A冷却が完了すると流通経路がV602を経由するラインへ切り替わります。 このラインでは減圧弁V370が設定圧までガスの圧力を落として2次側へ流しています。 しかし2次側がV370の設定圧よりも高い圧であるとガスを流すことができません。 この場合ガスが停滞してしまい冷媒が供給されないため低温状態を維持できず、温度上昇していきます。
そこでV370の2次側の圧を落とすために放出弁(下図:V339を開ける)より回収ラインへガスを逃がします。 2次側の圧がV370の設定圧よりも小さくなるとガスが流れ、冷媒が供給されるので昇温の原因を回避できます。

右図は起動時から定常状態に至るまでの液化運転の経過を表したグラフです(横軸:3分)。
上側のグラフが何も操作していない従来の運転状況です。 内部精製器冷却後に温度バランスを崩してTE-C(黄色いライン)、TE-D(緑色のライン)が激しく上下しています。 上述の通りこれはガスが停滞することで冷却効果を失いTE-Dは温度上昇し、TE-Cは逆に温度降下します。 これはTE-C、TE-Dの各部位の温度が熱伝導により相互に影響しあったものと思われます。 TE-Cが60Kまで過剰に冷却されると再生(リセットのようなもの)が入りTE-Cは正常範囲まで温度上昇します。 しかし、なおもガスが流れずTE-C、TE-Dの温度が熱伝導してしまう状況が続くと再び再生を繰り返します。 3回前後再生を繰り返した後、ガスがV370を流れ始めますと、熱交換が機能し始めTE-C、TE-Dそれぞれが温度を維持し 定常状態へと落ち着きます。 上中下3つのグラフを見ますと、それぞれグラフ中央上面から緑色のラインが降りてきてしばらく後に黄色のラインが降りてきています。 これは内部精製器の冷却過程に入るとまずTE-D部位(緑色のライン)がすぐに冷却され、 時間を追ってTE-C部位(黄色のライン)が冷却されてくるという事を表しています。 注目点はこのタイムラグで、緑色のラインと黄色のラインの幅が上のグラフに比べて 中と下のグラフはだいぶ広くなっています。これは@の操作により、それだけ冷却に時間をかけているということを示しています。
隙間  <従来の運転状況>
 <操作@をした運転状況>
 <操作@A両方した運転状況>
まん中のグラフは操作@のみをした運転状況です。冷却に時間をかけているので芯までしっかり冷え、上側のグラフのような温度のブレは見られません。 ただV370をガスが流れられず、内部精製器内にガスが滞ってしまう時間帯があり、ここで微妙にTE-D部位(緑色のライン)の温度上昇が見られます。
下側のグラフが操作@A両方した運転状況です。TE-C、TE-Dの温度ブレがなくすんなりと定常状態へ落ち着いています。 減圧弁V370の2次側の圧を冷却過程中に並行して抜いておいたため、冷却過程完了後V370を経由するラインへ切り替わった時に すぐにガスがV370を流れることができます。ガスの停滞がないため内部精製器の温度上昇も見られません。 グラフの曲線も当初の激しく上下していたものと比べると、とても滑らかなものとなっています。

従来の運転では冷却は速いものの温度バランスを崩してモタついているのに対して、 バルブ操作した運転では冷却過程に時間は割いているもののすぐに定常状態へ落ち着いています。 起動から定常状態へ至るまでのトータルの所要時間を比べてみると、 従来の何も操作をしていない運転よりもバルブ操作を行なった運転のほうが速く定常状態に達しています。 勿論これは運転に影響を与える他の要素が絡みますので単純な比較はできませんが。

平均所要時間
[単位:分]
運転日数間隔
中1日
運転日数間隔
中2日
運転日数間隔
中3日
運転日数間隔
中4日
運転日数間隔
中5日
従来※1 操作※2 従来 操作 従来 操作 従来 操作 従来 操作
内部精製器の冷却過程 13.6 31.2 14.7 34.0 15.3 35.2 15.3 38.8 15.8 37.3
冷却過程完了〜定常まで 37.8 5.2 38.1 4.5 34.7 5.3 37.1 5.3 35.1 5.0
起動〜定常までトータル 120.1 103.6 143.3 129.3 156.1 143.9 174.5 147.5 179.0 161.7
※1 従来: バルブ操作をしない従来の運転の所要時間データの平均(2007,2008)
※2 操作: バルブ操作@Aをした運転の所要時間データの平均(2009)


・ヒーターの故障
前述の「内部精製器冷却過程の工夫」の発端はヒーターの故障でした (ヒーターが壊れている⇒ヒーターが使われる場面をなくせないか?⇒過冷却なガスが出て来なくなるよう工夫する)。
減圧弁が異音を発するので調べてみたところ減圧弁が非常に熱くなっていました。 減圧弁の上流にあるヒーターが作動して過剰に熱せられたヘリウムガスが減圧弁を損傷させている状態でした。 液化運転において定常状態ではヒーターで加熱される場面はないはずなので誤作動を起こしているようです。 ヒーターを制御しているシーケンスがおかしいのかセンサーが壊れているのか、とりあえず応急措置として ヒーターを配管部から引張上げてガスを熱しないように処置しました(下写真左)。 写真を見てわかるとおりヒーターは空焚き状態となって赤熱しています。 この状態は火事を誘発しかねない危険な状態です。実はその後ヒーターの誤作動自体が起こらなくなったため、 事もあろうにこの状態を1年間放置してしまいました。 既に更新予算が付いたこともあり、本格的な修理をするまでもないかという考えもありました。 そして今回ヒーターの誤作動が再発しました。いつから再発したのかは不明ですし、または 低頻度で常に誤作動を起こし続けていたのかもしれません。

プラスチックやビニールを焦がしたような嫌な臭気が立ち込め、確認したところ焼き付いているのを発見しました。 これはヒーター熱によって直接焼き付きが発生したのではなく、空焚きが原因と思われる過大電流により センサー部TS-61が焼き付きを起こしたものと思われます(上写真右)。ヒーターは不規則に付いたり消えたりするのですが ヒーターの通電(赤熱で確認)と同期して焼き付いた部分から煙が発生していました。

上図はヒーター部分の配線図です。左側にF5というヒューズが入っております。 ヒューズは過剰な大電流が流れた場合にそこが切れることで通電を止め、回路を守るものです(今回は焼き付が発生しているのに ヒューズが切れてくれませんでした、これでは役目を果たしていません)。 ヒーターを作動させないための手っ取り早くて簡単な方法はこのヒューズを抜いて断線してしまうことです。 今回はこのヒューズを抜いてひとまずヒーターを機能させないように処置しました。 空焚きについては火事が起こらなかったから良かったものの、実は非常に危険な状態で放置していた事になります。 これは技術職員としてのセンスの無さを露呈してしまった出来事でした。


・V806による戻りガスの温度操作
熱交換を終え液化機から液化用圧縮機へ向かう配管に結露が目立つようになり、 梅雨の時期や夏季の雨天の日は特に結露がひどく配管の下がビショビショに濡れてしまう状況でした。 配管下に軒樋(雨だれを流す半円状のトレイ)を設置してバケツに結露水を集めて対応していました。 当初これは老朽化による熱交換不良が次第に顕著になったものなのだろう仕方ないのだろうと考えておりました。


液化機へ入ってきたガスが最初に向かうのがE30とE81という2つの並列した熱交換器です。 E30とE81へ向かうガスの流量調整をしているのがV806というバルブです。 このV806を操作してE30へ向かうガス流量を増やしてやると E30での熱交換が活発になり外へ向かうガスの温度(TE-G)が上昇します。 これにより液化機から圧縮機へ向かう配管の結露を大幅に減少させることに成功しました。
流量バランスが設置当初の設定よりずれてきたのかもしれません。 バルブ操作で微妙に調整するだけで解決できるとは思ってもいませんでした。 右写真は冬季12月における液化用圧縮機への戻りラインの配管の結露の様子です。 操作前は配管内を通るガスが冷た過ぎ結露部分が凍結しています(TE-G=262K)。 操作後は戻りガスの温度が上昇し(TE-G=270K)結露が大幅に減少しました。 熱交換器E81へ向かうガスを減らしたことによって液体窒素の使用量も減ったのでしょうか、 確認しておけば良かったです。

操作前:結露が凍っている

操作後:大幅に結露が減っている


・液体窒素の使用量
ヘリウム液化運転において予冷に使用している液体窒素の使用量は長い間不明瞭なままでした。 供給元である液体窒素貯槽(CE)はヘリウム液化機専用ではなく学内の利用者が液取りも行っているため、 CEの貯蔵メーターではまったく利用量を量ることはできません。 そこで下写真のように液化機から蒸発して出てくる排気窒素ガスを検量することを行ってみました。

想像以上に流量があり、特に予冷の段階では液体窒素の蒸発量がとても多く直接ガスメーターに つなげてしまうと冷ガスによってガスメーターが凍り付いてしまうため、 ホースを20m巻きつけたものを水に浸し熱交換させています。 巻きつけた塊は水に浸すと浮き上がってくるため重りを上から置いています。

平均値
[液換算量]
起動から定常までの
使用量[L/h]
定常時の使用量
[L/h]
He1L液化に
費やす使用量[L]
既設圧縮機 34.2 27.9 2.3
移設圧縮機 39.2 30.0 2.2
全データ 37.0 29.2 2.2
※液化窒素貯槽圧0.20〜0.25MPa  ※2009運転データより

ガスメーターの変化量にその日の平均気温から膨張率を加味し液換算量を求めました。 表を見ると液化用圧縮機の種別によって多少の差があります。 既設圧縮機の方が移設圧縮機に比べて1時間当たりの液体窒素使用量が少ない傾向です。 しかし、ヘリウム1L液化するのに費やす液体窒素使用量は逆転し既設圧縮機の方が微妙に多くなっています。 既設圧縮機と移設圧縮機では液化速度に差があり(移設圧縮機のほうが液化速度が出る)、これが響いているためだと思われます。 いずれにしてもヘリウム1L液化に対して液体窒素を倍の2.0L以上も費やしているのは使い過ぎな気がします。


・液化運転の消費電力量
右図は消費電力量の統計を取り始めてからの年間データの比較です。 既に何度も触れていますが、液化機を起動してから実際に液化が始まるまでには2〜3時間ほどのタイムラグがあります(液化機本体の冷却過程)。 液化運転を長時間行うと稼働時間に占める冷却過程の比重が小さくなり、液化量に対する所要消費電力量も小さくなります。 このグラフも2006年から長時間・大量液化へ運転スタイルをシフトしたことを示しているものになっています。 液化量を増やしたことによって所要消費電力量が大幅に抑制できています。 しかしそれ以上の液化量を増やす長時間運転へ傾向しても既に飽和しているようで更なる抑制効果は見られません。 むしろ2007をピークにそれ以降は所要消費電力量が微妙に増えています。 やはりこれも老朽化による能力低下の影響ではないかと捉えています。

集計期間 期間消費電力量
[kWh]
期間液化量
[L]
He1L液化に
費やす消費電力量
[kWh/L]
平均液化量
[L]
2005.11-12 13,404.38 2,098 6.39 99.93
2006 78,243.54 17,559 4.46 175.31
2007 70,652.44 16,933 4.17 256.52
2008 85,265.92 19,817 4.30 274.96
2009 112,547.24 23,883 4.71 268.26

上表を見ると2009年の年間消費電力量は10万KWhを超え、例年より大きく伸びています。 これは液体ヘリウムの需要量が増加したための液化運転時間の増加と老朽化/能力低下による運転時間増加が主な要因です。 昨今の省エネ対策で学内環境組織より建物別の電気使用量から当施設の伸び率について節電を求められました。 極低温室では冷暖房はもちろん事細かく節電しておりますので少し悔しかったのですが、新装置になればいずれわかってもらえると期待しております。 現有機器の液化運転での消費電力量は一時間当たりおよそ60〜70kWhになります。 新規導入予定の機器は75kWhの予定で相変わらず大きな値となっています。 しかし液化能力が約3倍になりますので稼働時間が短縮できます (稼働時間の短縮:長時間の運転スタイルは変えないが運転頻度が減る)。 上表のようにHe1L当たりに換算すると格段に小さくなりそうです。 新装置でデータ収集し、今までのデータと比較するのが楽しみです。


・貯槽満タン時の様子
右図は貯槽液量が満タン近くまでなった時の液化運転の状況です。 グラフの右側においてPT-1(白)やPT-60(赤)、PT-34(黄)が徐々に小さくなっているのがわかります。 PT-1やPT-34は高圧ラインの圧力で、PT-60は不純ガスの取り入れ部分の圧力です。 いずれも圧力低下しています。 またTE-Dは温度が上昇しています。これはどういうことなのでしょうか。 理由として考えられるのは貯槽からの戻りガスが通常よりも低温になるため 液化機の過冷却状態が関係してそうです。
隙間  <貯槽が満タン時の運転状況>
液化用圧縮機の同一の吐出量に対して液化機が過冷却状態のため 流入してくるガス体積の熱収縮が通常よりも大きい幅になっているため圧力降下しているのかもしれません。 グラフでは確認しにくいのですがJT弁の直前部分で温度を計っている部位のTE-Bの温度は徐々に降下し液温付近まで冷えてきます(通常7K台が4K台まで降下)。 貯槽の液面が極めて高いため三重管を戻ってくる冷ガスもほとんど温度上昇せずにダイレクトに冷気をTE-Bの部位に与えている状況です。 実は液が逆流しているということもあるのでしょうか?

貯槽が満タンになりかけている状況の時にちょうど空容器の返却があったので、その容器へ液を汲んで貯槽の液面を下げてみました。 右図を見てわかるように、やはり意図していた通り圧力低下や温度の変化が平常の状態へ戻っています。 現行の500L容器では空近くまで使い込んでしまったり、満タンになってしまったり目一杯な運用状況です。 新規で導入する容器は2倍の1,000Lですので使い勝手がだいぶ楽になりそうです。 隙間  <貯槽が満タン時に汲み出しした時の運転状況>


・エンジン回転数操作実験
どのように運転すれば液化速度が出るのかいつも考えておりました。 エンジンバルブのクリアランス操作実験はやりがいのある面白い実験でしたが、 実はエンジン回転数操作実験も行っておりました。 これは運転の回転数モードをオートモードから手動モードに変えて強制的に任意の回転数を指定します。 データ不足のため未完成ですが、もう装置がないため完成することはできないので今ここで紹介いたします。 右図を見ると2台ある圧縮機のどちらのデータとも連続性が見られます。 平均回転数を上げていくと液化速度も比例して上昇しています。 しかし140RPMをピークにそれ以上では急降下し160RPMでは10.0L/hほどしか出ていません。 これは面白いですね。機械のオートモードが必ずしも最適化されているわけではなく 調節次第では能力をより多く引き出すことができるということです。 ちなみにオートモードでの運転では回転数は概ね80RPM前後であり、 140RPMという速度は普段見慣れているものよりもはるかに速く、 摺動部に過剰な負担がかかっていないのかとても心配になりました。 回転数160RPMに至っては速過ぎて今にも壊れそうでとても見ていられない状況でした。 その後もデータ取りを行ったのですが液化機が調子を崩したのか原因は不明ですがデータが全く規則性の見られない バラバラなものとなってしまいました。クリアランス操作実験においても途中から不調なデータばかり出るようになった ことを踏まえると、この頃から液化機が調子を崩し始めたのかもしれません。 クリアランス操作実験の時もそうでしたが様々な要素に影響を受けているため、 運転条件が揃っているわけではないので何とも言えません。 いずれにしましても、もう少し早い時期にまとめてデータ取りしておくべきでした。悔やまれます。


・再生時ブローガスの純度
液化運転で原料としている回収ヘリウムガスには空気等の不純物が混入しています。 回収ヘリウムガスは油水分離機や中圧ガス乾燥機など精製器を経て液化機まで到達し、 含有している不純物は極力排除され高純度な状態になっています。 しかし、なおも残留している不純物は液化機の内部精製器によって取り除かれます。 この内部精製器は不純物をトラップしある限度量まで溜め込むと、大気中へ吐き出します(再生と呼んでます)。 さてこの再生で吐き出しているガスは主成分が内部精製器がトラップした不純物なのですが、 機器から大気へ吐き出すために高圧のヘリウムで吹き飛ばしています。 そこで、このブローガスがどれほどのヘリウムを含んでいるのかヘリウム純度を測ってみました。

 [ 再生時ブローガスのHe純度: 62.1 % ]

まったく見当も付かなかったのですが、トラップした不純ガスを吐き捨てるのに、その不純ガスの分量 よりも多くの分量のヘリウムガスを費やしているということになります。これは非効率なのでしょうか? 良いのか悪いのか良くわかりません。 ちなみに回収ガスが不純物を多く含んでいてHe純度が悪かった場合は再生の時間間隔が短くなり、回数が増えます。 ブローガスの純度そのものは不変のものと思われます。



<オーバーホール>
概ね年に一回、分解してクリーニング・消耗部品交換を行ってきました。 オーバーホールにはおよそ一週間ほどの時間がかかり、その期間中はヘリウムの利用を停止します。 このため機器の調子が悪いなど緊急な場合を除いて、学生の入れ替わった年度始めや秋の物理学会中など ヘリウムの利用が少ない時期を狙って行います。


オーバーホールの手順
    [事前準備]
  1. 液化機をウォームアップ(昇温)させる: 内部が低温のまま開放すると内部に入り込んだ空気が凝縮凝固し 配管経路にこびりついてしまい、狭い領域では閉塞などを起こす可能性もあるため昇温はきちんと行わないといけません。 機器についている温度計が273Kだったため開放しましたが、空気等不純物が原因と思われる目詰まりが起きた事例がありました。 つまり機器の温度計が指している箇所が機器内での最低温度箇所ではなく、他の箇所ではもっと温度が低い事もあるということです。 オーバーホールはヘリウムの利用停止をしている状況で行うため、なるべく早く復旧したいという焦りがありますが、 開放の判断はもう少し余裕を見て行うようにしたほうが良いということです。 ウォームアップは夏季であれば週末放置すればすぐ昇温しますが、断熱真空層へ窒素ガスを封入して 断熱を破って熱伝導させる手段もあります。なお運転直後の冷え切っている時に断熱真空層へ窒素ガスを入れても真空計が全然反応しません。 これはクライオポンプの現象です。封入された空間が極低温のため窒素ガスが凝結固化して機器壁面に吸い付いてしまうためです。
  2. バルブ操作表の作成: 普段触らないバルブを多数操作します。表を作成し“操作前の状態”、“操作後の状態”を記しておくと復帰の時に 操作間違えを防ぐことができ便利です。
  3. 貯槽の圧を抜いておく: デリバリーチューブ(三重管)を抜く際には貯槽の圧があると危険なため降圧しておきます。
  4. 前回運転ではリカバリータンクの圧を多めに残しておく: デリバリーチューブなどヘリウムガスでブローするときに 使うため余裕を残しておきます。

  5. [圧抜き・縁切り]
  6. リカバリータンク、バラストタンクの元弁を閉じます
  7. 圧抜き: 高圧ライン、低圧ライン、純ガス供給ライン、不純ガス供給ライン等放出バルブより圧を抜きます。
  8. 縁切り: 液化機背面の配管を外します。エアロクイップになっていて外しても空気が入り込まなくなっています。

  9. [分解]
  10. デリバリーチューブ抜き: 重量があるのと水平に引き上げないといけないため、液化機側・貯槽側・中央・水平の確認と4人がかりで行います。
  11. 各部位の取り外し: オルタネーターをおろし、バルブロッドコレット・バルブアーム取り外し、メインフレームの引き上げます。 バルブアーム、エンジンバルブは第1膨張エンジン吸気(1I)、排気(1E)、第2膨張エンジン吸気(2I)、排気(2E)と4本あるので それぞれをごっちゃに混ざらないように分けて保存しておくのがいいです。
  12. エンジンバルブ、ピストンの引き抜き: 圧力が残っていると非常に危険なので圧が抜けていることを必ず確認します。 ピストンボディが膨張したのかシリンダーから抜きにくかったり、戻す時に硬くて挿入しにくい事がありました。 この時はベークライトのボディをサンドペーパーで磨いて減肉して対応しました。

  13. [クリーニング・消耗部品交換]
  14. ピストン、エンジンバルブのクリーニング・部品交換: ガーゼにアセトンを染み込ませ洗浄します。Oリング、フェルト、バルブシールを交換します。
  15. シリンダーのクリーニング: 表面を傷つけないようにやわらかい素材の棒(木製棒)の先端にガーゼを巻きつけたものに アセトンを染み込ませてシリンダー内壁を洗浄します。上部の汚れを下部へ落とさないため底部から上部へ向かって洗浄していきます。
  16. ピストン・エンジンバルブの挿入: クリーニングが終わったら直ちにシリンダーへ挿入してしまいます。

  17. [組み立て]
  18. メインフレームやバルブアームの組み立て: 1E、1I、2E、2Iを当初の位置通りに配して組み立てます。
  19. コレット位置の調整: エンジンバルブの開度を調整している留金(コレット)の位置を隙間ゲージで調節します。
  20. グリスアップ: リストピンベアリング、クランクピンベアリング、クロスヘッドガイド、バルブアームブッシング、 ジャックシャフトベアリング、メインシャフトベアリングへグリスを塗る。古いグリスはふき取った方が良いです。

  21. [真空引き]
  22. 真空層の真空引き: 断熱真空層の真空引きは昇温が達成されたら早々とやってしまいます。
  23. Heラインの真空引き: 開放して空気が入り込んでしまったHeラインを真空ポンプで引いて空気を追い出します。 ある程度引けたらヘリウムガスを封入して満たし、再度真空引きをします。 この行為を複数回繰り返します。それによって不純物を希釈し残存ガスをヘリウムで置換していきます。 仮にラインに微小なリーク(漏れ)があった場合は真空引きをすると、そのリークから空気を吸い込むこと になりますので、ガス封入/パージの行為がとても有効になります。 最後にヘリウムガスを多めに封入して完了します。 引き方ですが、当初は真空引きの時間を3時間前後取りヘリウムガスの置換回数は4,5回程度でしたが、 真空引きの時間を15分程にしてヘリウムガスの置換回数は10〜20回とした方がいいそうです。

  24. [復旧]
  25. ラインの回復: 高圧ライン、低圧ライン、純ガス供給ライン、不純ガス供給ラインを接続します。圧力差があると接続時に異音を発します。 低圧ラインの配管は容量が大きいため、デリバリーチューブをブローするため加圧する時は閉めていた方が良いです (リカバリー圧を無駄に使わなくてすむ)。
  26. デリバリーチューブの装着: 液化機側へ半分だけ挿入し貯槽側はまだ挿入しません。この状態で液化機をリカバリータンク圧で加圧します。 バルブを開けてデリバリチューブ内をヘリウムガスでブローしてやります。十分ブローできたら、ブローしたまま貯槽側も挿入します。 これは空気の混入を防ぐためです。しかし室温のヘリウムガスが貯槽内へ吹き込まれるため貯槽内圧が急上昇するので、 挿入したらすぐにブローを停止します。

  27. [チェック]
  28. エンジンバルブのリークチェック: 液化機を加圧して4本あるエンジンバルブを1本づつ開いて圧力変化をチェックします。 圧力を維持できれば交換したエンジンバルブシールにリークがないということが確認できます。
  29. バルブ操作表の確認: バルブの開閉が元の状態に戻ったか確認します。戻し忘れがないか表があるととても役に立ちます。


<最後に>
当初、この液化機は他大学で譲り受けてくれる予定でしたが、譲渡先に補正予算が付いたことで 新設備導入の目途が立ち譲り受け辞退となり、完全廃棄となってしまいました。非常に残念です。 2010年1月初旬、工事がいよいよ始まり既存機器の撤去作業が行われました。 液化室の中心に鎮座していた液化機がいとも簡単に撤去されていく様子はなんとも寂しいものがありました。 私がこの液化機の面倒を見たのはわずか6年間でしたが、様々なトラブルからは得るものが多くとても勉強になりました。 ヘリウム液化機の主流は完全にタービン式に移行しており、千葉大にあったこのレシプロ式の液化機は数少ないものの一つでありました。 タービン式はメンテナンスフリーと謳われ保守管理が楽なようです。 ただ壊れた場合は簡単に手を出せる部分は少なく大事になってしまうようです。 対するレシプロ式はメンテナンスには手がかかりますが、トラブルが起きてもいくらでも手が出せるという特徴があります。 手をかければそれに応えて調子を戻してくれます。愛着を持っている技術者が多い所以かもしれません。 上手い例えではないですが、タービン式=オートマ車、レシプロ式=マニアル車といったイメージに近いでしょうか。 自分で運転している感があります。 私が新採用として最初がこの液化機だったことはとても幸運だったと思っています。