強相関電子系理論研究室(太田研究室)千葉大学大学院理学研究科
千葉大学理学部

講義関係(太田担当分)

学部(理学部物理学科)

統計物理学I(3年前期)・II(3年後期)

目的

平衡系の統計物理学に関する基礎を習得する。

対象

理学部物理学科 3年前期・後期、必修科目。 他学年、他学科、他学部の意欲ある学生の受講も歓迎します。

項目

熱力学のまとめ

  • 熱力学第1法則、第2法則
  • 熱力学の解析化
  • 熱平衡の安定条件
  • 統計力学との関係
気体分子運動論
  • 理想気体、ベルヌイの式
  • マクスウェルの速度分布
  • ビリアル定理
微視状態数の計算と小正準集合理論
  • リュービルの定理とアプリオリ確率の仮定
  • 自由粒子系
  • 調和振動子系
  • 回転子の系
  • 2準位系
  • 応用例(合金系、鎖状分子、ゴム弾性など)
  • 1粒子状態数(古典論対量子論)
  • 粗視状態と最大項の方法
  • Bose-Einstein分布とFermi-Dirac分布の導出(最大項の方法)
正準集合理論と簡単な応用
  • 正準分布の導出
  • 熱力学と統計力学の対応
  • 状態和の性質
  • 古典論的統計力学(理想気体、調和振動子、回転子、電気または磁気双極子)
  • エネルギー等分配則の成否
  • 並進、回転、振動の量子論的統計力学
  • 常磁性(量子論的考察)
  • イジングスピン系
粒子の統計性と量子統計法
  • 量子論的自由粒子の識別不可能性とその帰結
  • 統計性(フェルミ粒子・ボーズ粒子)と粒子数表示
  • 少数自由粒子系への応用
  • 純粋状態と混合状態
  • 量子力学的不確定性と密度演算子
  • ノイマン方程式
大正準集合理論と理想量子気体
  • 大正準分布の導出と熱力学との対応
  • フェルミ統計法、ボーズ統計法
  • 理想フェルミ気体(Sommerfeld電子論: 電子比熱、パウリ常磁性、ランダウ反磁性)
  • 理想ボーズ気体のボーズ凝縮
波動場の統計力学と素励起の概念
  • 調和振動子の集まりとしての波動場
  • 粒子数不定のボソン系・フェルミオン系
  • 素励起の概念
  • 黒体輻射(Stefan-Boltzmannの法則、Planckの熱輻射の式、Wienの変位則)
  • 結晶の格子振動(Einstein模型とDebye模型)
体系の安定性とゆらぎ
  • 小正準・正準・大正準集合理論の間の関係
  • 微視状態密度と体系の安定性
  • ゆらぎと応答関数(遥動散逸定理)
  • 情報論的エントロピー
  • 部分平衡の方法
  • 少数系に対する数値計算
相互作用の強い系への統計力学の応用(局在スピン系)
  • 平均場理論(ワイス理論、自己無撞着場)
  • Bragg-Williams近似
  • Bethe近似とスピン相関
  • 変分原理とその応用
  • 部分和と転送行列法
  • 長距離相互作用模型と無限成分模型
相互作用の強い系への統計力学の応用(遍歴電子系)*
  • 数表示と第2量子化法
  • 1電子バンド構造
  • ストーナー強磁性理論
  • 遍歴電子系に対する平均場理論(ハバード模型、遍歴磁性、スピン密度波)
  • 超伝導のBCS理論
ランダウの2次相転移の理論 *
  • ランダウ自由エネルギー
  • 汎関数積分
  • 鞍点近似
  • ガウス模型
  • モード結合理論
臨界現象の統計力学 *
  • 臨界指数とスケーリング則
  • 次元解析
  • 相関関数のスケーリング形
  • スケール不変性

教科書

教科書「演習で学ぶ統計力学」(太田編著)を使います。 毎年度初めに生協の教科書販売コーナーで最新版を販売します。

参考書

  • 高橋康 著「統計力学入門(愚問からのアプローチ)」(講談社, 1984)
    ...... 要点が端的に整理された分かりやすい本。この本が出版されて救われた人も多いはず。
  • 長岡洋介 著「統計力学」(岩波基礎物理シリーズ7, 1994)
    ...... 一読して分からせてくれる良書。これを読んで理解し十分演習をやれば、学部3年レベルの統計力学はOKかな。
  • 久保亮五 編「大学演習 熱学・統計力学」(裳華房, 1961)
    ....... だれでも知っている非常に有名な演習書。
  • 市村浩 著「熱学演習-統計力学(改訂版)」(裳華房, 1993)
    ...... 丹念に書かれたかゆいところに手がとどく良書。教科書もある。
  • 宮下清二 著「熱力学の基礎」(サイエンス社, 1995)
    ...... 標準的な熱力学の教科書。
  • 田崎晴明 著「熱力学=現代的な視点から」(培風館新物理学シリーズ32, 2000)
    ...... 熱力学を見通しよく論理的に理解することを目指し、伝統的な方法とは異なるアプローチをとる。
    熱力学・統計力学の学部レベルの教科書は、上記以外にも沢山あります。

評価

前期・後期とも、3回に1回位の割合で(従って合計4~5回の)試験を行う。各回毎に問題集「演習で学ぶ統計力学」から出題範囲を指定して「3問+α」出題する。 全部の試験に渡って「平均3問中2問以上正解」が合格の条件。前期・後期独立に判定。 これは3年の必修科目であり、「不合格」は同時に「留年」を意味するので、十分注意すること。

過去の試験問題を統計物理バーチャルセミナーで公開しています。毎年少しずつ傾向が変化しているので注意してください。 3年の終わりには「問題集」を振り返って「なんだ、簡単な問題ばかりではないか」と思うことになるでしょう。その時は上記「参考書」をさらに勉強して下さい。

統計物理学Ⅲ(4年前期)、凝縮系物理学(博士前期課程)

目的

学部3年までの量子力学・統計力学の学習を前提に、相互作用の強い系の統計力学、多体系の量子論、電子物性論等の、4年生および大学院課程で履修すべき幾つかの事項を講義し、また最近の興味ある話題を紹介する。

具体的内容は、下の項目から受講者の関心に応じて、適宜選択する。

対象

基本的には理学部物理学科4年生を対象としますが、修士課程学生の受講、その他の学年、他学科、他学部、他専攻等、意欲ある学生ならば誰でも歓迎します。

項目

統計力学のアドバンスト・コース

格子気体

  • ランダウ・ギンツブルグ展開
  • ベーテ近似と相関関数
  • 変分原理とその応用
  • Ising模型の厳密計算
  • 密度行列と摂動論
  • 臨界指数
  • Ginzburg-Landau 展開
  • 繰り込み群の方法
  • 量子力学的秩序(超流動・超伝導)
  • 2次元系におけるトポロジー的相転移
多体系の量子論
  • 数表示と第2量子化法
  • グリーン関数と場の理論(絶対零度)
  • 有限温度の理論
  • 線形応答理論と揺動散逸定理
電子物性論
  • Tight-binding approximation and band calculation
  • Slater-Koster scheme and d-bands
  • Stoner theory of itinerant ferromagnetism
  • Structure and magnetism of intermetallic compounds
  • Mean-filed theory of the Hubbard model
  • Nonlocal susceptibility and Fermi-surface nesting
  • Dynamical susceptibility and random phase approximation
  • Stoner excitaion and spin-wave excitation
  • Paramagnon
  • Kanamori's theory of Ni ferromagnetism
  • Magnetic impurity and Anderson model
  • Gutzwiller wave function
  • Spectral representation of the Green's function
  • Quasiparticles and their damping
  • BCS theory
  • Bogoliubov-De Gennes equation
  • Ginzburg-Landau theory
  • Boltzmann transport theory
  • Kubo formula and electric conductivity
  • Anderson localization and Landauer formula
強相関電子系における最近の話題
  • Materials in oxides and organics
  • Mott insulators
  • Electronic structure and d-p model for cuprate superconductors
  • Hubbard and t-J models in low dimensions

参考書

  • 太田編著「演習で学ぶ統計力学」(毎年度はじめに生協で販売します。)
  • Kerson Huang "Statistical Mechanics (Second Edition)" (John Wiley & Sons, 1987)
  • 宮下精二 著 「熱・統計力学(物理学基礎シリーズ4)」(培風館, 1993).
  • A. A. Abrikosov, L. P. Gorkov, I. E. Dzyaloshinski "Methods of Quantum Field Theory in Statistical Physics" (Dover, 1975).
  • A. L. Fetter and J. D. Walecka "Quantum Theory of Many-Particle Systems" (McGraw-Hill, 1971).
  • 斯波弘行 著 「固体の電子論」(丸善, 1996)
  • 伊達宗行 編 「大学院物性物理2(強相関電子系)」(講談社, 1997)

評価

出席状況とレポート等、及び必要に応じて課す試験により、総合的に判定する。

熱・統計力学少人数セミナー(先進2年後期、一般学生の参加も歓迎)

田崎著「熱力学=現代的な視点から」(培風館)やキャレンの教科書などを輪講します。

統計力学少人数セミナー(先進3年前期、一般学生の参加も歓迎)

ランダウ「統計物理学」(岩波)や久保「統計力学」(共立全書)などを輪講します。

大学院(基盤理学専攻物理学コース)

凝縮系の量子論(博士前期課程)、強相関系物理学(博士後期課程)

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