研究内容
強く相互作用する多電子系の物性に関する理論的および計算物理学的研究
強く相互作用する多電子系(強相関電子系)の示す物性の理解という問題は、最近注目されている高温超伝導や重い電子系など観測される極めて多彩な現象に裏付けられた、物性物理学の基本問題である。 そこでの中心的課題は、低エネルギー磁気および電荷励起を記述する基本的電子構造の理解、そしてそれに基づく電子輸送現象の解明である。
本研究室では、こういった強相関電子系の電子状態を、大型計算機を用いた計算物理学的手法、あるいは場の量子論を基礎とする解析的手法により究明することを目指している。 すなわち、強相関電子系を記述する新しい物理概念の創成、あるいは電子状態理論の枠組みの構築に関して、基礎的観点から貢献したい。
低次元強相関電子模型における電荷ゆらぎとスピン励起および超伝導発現機構
低次元強相関電子系や低次元有機伝導体などで見られる特異な電子状態と新奇な超伝導発現機構の解明を目指す。 ハバード模型、t-J模型、アンダーソン格子模型など強相関電子模型や第一原理電子構造計算の手法による遷移金属化合物の電子状態計算を組み合わせることで、異常金属相や種々の量子相転移を調べる。 また、強相関系における高温超伝導発現機構の研究を行う。
強相関電子模型に対する新しい数値計算手法の開発
自己エネルギー汎関数理論に基づく変分クラスター法、密度行列繰り込み群や量子モンテカルロ法などの数値計算手法の開発を行う。 当研究室では主に以下の数値計算手法を使用する。
- 変分クラスター近似 (variational cluster approximation)
- 密度行列繰り込み群法 (density-matrix renormalization group method)
- 量子モンテカルロ法 (quantum Monte Carlo method)
- 変分モンテカルロ法 (variational Monte Carlo method)
- 厳密対角化法 (exact-diagonalization method)
最近の研究課題
- 自己エネルギー汎関数理論(SFT)に基づく変分クラスター近似(VCA)の開発と応用
- 強相関電子系の特異な量子状態に関する基礎理論の構築と物質科学
- トポロジカル絶縁体への電子相関効果の理論
- 励起子ボーズ凝縮とその周辺の超伝導,新規超伝導体の発現機構の微視理論
- 光学格子に閉じ込められた冷却原子系の研究
- 第一原理計算(WIEN2K)の応用
- 密度行列繰り込み群(DMRG)の開発と応用