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Research Topic

非平衡量子系・新しい量子状態の生成・制御

強力なレーザーや時変外場で量子多体系を駆動し、平衡系では実現しないトポロジカル量子状態や非平衡相を創成・制御します。

レーザーによる量子多体系の状態制御の概念図

近年、強力なレーザーを量子多体系に照射し平衡系では実現しない非平衡量子状態を生成・制御する研究が急速に進展しています。 レーザー科学が発展していることは上の欄でもすでに述べた通りです。 我々は、単純で現実的な量子系である量子磁性体・誘電体・電子系にレーザーを照射して誘導される新しい物理現象を探索しています。 この研究は、上覧で既に述べたスピントロニクスとも密接に関係しています。 実際上で紹介した2つの成果(A1)(A2)も、ここに分類される成果とも言えます。 ここでは最近の成果(B1)(B2)について紹介します。

主な成果

(B1) キタエフハニカム模型におけるレーザー誘起トポロジカルスピン液体状態

キタエフ模型におけるレーザー誘起トポロジカル相

キタエフ模型はハニカム格子上で定義されるスピン軌道相互作用の強いモット絶縁体(Ir酸化物など)の有効量子スピン模型です。 この模型は、そもそもキタエフ氏(2006年)が物質科学とは全く関係ない数理物理的動機から提案した模型であり、基底状態が厳密に表現できるスピン液体状態(秩序がない状態)であり、低エネルギー励起がスピン系であるにもかかわらずマヨラナフェルミオンで表現される、ということで良く知られています。 2009年頃からの欧州グループの研究により、この人工的な模型がスピン軌道相互作用の強いモット絶縁体の低エネルギー有効模型に成り得ることが指摘され、物性研究分野におけるこの模型に対する関心が爆発的に高まりました。 我々はマルチフェロイクス的な電気磁気結合を持つキタエフ模型をフロケ理論に基づいて微視的に解析し、右(左)巻き偏光レーザーをキタエフ模型に照射すると、ギャップが開き、右(左)回りにマヨラナカイラルエッジ流が流れるトポロジカルスピン液体(トポロジカルp波超伝導体と等価)が発生することを高周波極限で厳密に示しました。 これは強相関系におけるレーザー誘導トポロジカル量子相の初めての予言といえます。

参考文献

(B2) 多層グラフェンにおける光誘起エッジ状態

フロケ理論と多層グラフェンの光誘起エッジ状態

ディラック電子型の分散関係を持つグラフェン(6角格子上に配列した炭素原子による2次元電子系)に円偏光レーザーを照射すると、レーザーにより新しい虚数因子を持つホッピング項が有効的に誘導されバンドギャップが開き、エッジ電流が流れるトポロジカル絶縁体相が現れることが予言されています。 最近、この予言に対応する実験も実施され、固体電子系のレーザーによる電子状態の制御に関する研究が発展しています。 このレーザー誘起”相転移”現象は、より一般の2次元格子電子系に応用可能と推測されます。 そこで我々は、ディラック電子的分散を持つ多層グラフェン格子上の電子模型に円偏光レーザーを印加した際の有効模型をフロケの定理と1/Ω展開法用いて導出し、それらの基底状態を解析しました。 その結果、多層グラフェンの種類に応じて多様なエッジ流を持つトポロジカル絶縁相が実現することを明らかにしました。

参考文献

  • M. Sato, Y. Sasaki, and N. Furukawa, in preparation.