我々のグループは、「クォークの閉じ込め」の解決を目標として「ヤン-ミルズ理論」に関する様々な理論的研究を行っています。
「ヤン-ミルズ理論」とは、マックスウエル(Maxwell)による電磁気の理論を拡張したもので、特別な場合としてこれを含みます。この理論は、「ゲージ理論」と総称されるクラスに属する理論で、「ゲージ」という名前は「ゲージ変換」に由来します。つまり、ゲージ変換を行っても物理的な帰結には影響を与えないような理論を一般にゲージ理論というのです。
皆さんは、すでに、電磁気を学ばれて、Maxwell 方程式に集約される電磁気の理論の美しさをよくご存知と思います。では、なぜそれをわざわざ拡張する必要があるのでしょうか。それは、数学的に拡張が可能というだけではなく、ゲージ理論が、「電気・磁気力」(electro-magnetic interaction)だけでなく、陽子や中性子などを結合して原子核を作る「強い力」(strong interaction)や原子核のベータ崩壊などを引き起こす「弱い力」(weak interaction)も記述する理論と現在では考えられており(実験的にも検証されています)、そのためにはある種の拡張が不可欠なのです。
現在の素粒子論では、物質を構成する根源的な物質は「クォーク」(陽子、中性子、中間子などの元になる素粒子)と「レプトン」(電子、ニュートリノの仲間の素粒子)であり、その間に働く力は4種類に、つまり、電磁気力、強い力、弱い力と重力に分類できると考えられています。クォーク・レプトンとそれらに働く4種類の力を解明すれば、自然界に起こる全ての物理現象は完全に記述できるはずです。これらの物質と力を記述する理論は広い意味で皆ゲージ論であるといえますが、特に、これらの素粒子間に働く力を記述する理論が「ヤン-ミルズ理論」なのです。
「クォーク閉じ込め」の問題とは、クォークはいつも「色」の異なる3つのクォーク(又は反クォーク)の組み合わせ(バリオンと呼ぶ)か、クォークと反クォークの対(メソンと呼ぶ)という形でしか観測されていない、つまり、クォークはハドロン(バリオンとメソンの総称)の中に閉じ込めれていて、未だかって、単独で観測されたことは無い(いつも無色の組み合わせでしか観測されない)のはなぜかという疑問です。
クォークは物質の究極的構成要素と考えられていながらそれを直接観測した人はいないのです(実は、グルーオンもそうです)。もし、単独で観測されたならクォークは電気素量の1/3や2/3といった半端な電荷を持っているはずです。
この問題は、30年近く世界中の理論物理学者が取り組んでいるにもかかわらずいまだに未解決の超難問です。これを肯定的に解決する事がこのグループのひとつの目標でもあります。現在、それに付随した様々な理論的問題を研究しています。
この問題の重要性とその難しさは、ごく最近、クレイ数学研究所(米国ボストン)が発表した7つのミレニアム賞問題(一問正解につき100万米ドルの賞金)のひとつとして取り上げられていることからもわかります。http://www.claymath.org/millennium-problems
更に詳しくは、最近の解説
著書
研究論文
総合報告
等をご覧ください。
教科書
主要な役職のみ