セミナー Seminar

2020年度セミナー@茨城大


今年度のセミナーはzoomでリモート開催の場合が多いです。 例年は、E棟E305室、第5,6,7講義室などで実施しています。
アクセスについては素粒子理論のページ(研究室へのアクセス) を参照ください。

  • 杉浦 祥 氏 (NTT Research Inc. Phi laboratory) 2020年12月23日 15:30からzoom (第19回QLCセミナーも兼ねる)

    ポラリトンによる光波混合とFloquetレーザー

     フォノンと光が物質内で束縛状態を形成している時、それはフォノンポラリトンと呼ばれる。フォノンポラリトンを形成する事で、物質内に光を閉じ込めることができ、伝播速度も遅くすることができるなど、フォノンポラリトンはテラヘルツ周波数の光学において重要である。

     本講演では、まず、ポンプ光により強くフォノンポラリトンを励起した状況下における、ポンプ&プローブ実験の解析のための理論的枠組みを提示する。物質内のプローブ光の伝搬は、ポラリトンによる振動により、FloquetバージョンのMaxwell方程式により記述され、非線形性によりポラリトンとプローブ光の光波混合が引き起こされる。その結果、ある周波数帯ではプローブ光が増幅される事が示され、これはCartellaらの最近の実験[1]と整合する。

     本講演ではさらに、この系において共鳴的なポラリトンの散乱によるレーザー現象が生じていることを示す。この時、プローブ光は時間とともに指数関数的に増幅され、ポラリトンは効率的に光へと変換される。このレーザー現象は現在の実験技術において容易に到達可能な範囲にあり、例えばSiCにおいて実現可能であると考えられる。

    参考文献:
    [1] A. Cartella, T. F. Nova, M. Fechner, R. Merlin, and A. Cavalleri, PNAS 115, 12148 (2018).
    [2] S. Sugiura, E. A. Demler, M. Lukin, and D. Podolsky, arXiv:1910.03582.


  • 高橋 和孝 氏 (東京工業大学 科学技術創成研究院) 2020年11月25日 15:30からzoom (第17回QLCセミナーも兼ねる)

    断熱ショートカットとダイナミクスの構造:周期駆動系への応用

     操作・制御の問題では、与えられたハミルトニアン(時間発展生成子)の運動方程式を解いて状態を得る代わりに、望みの状態を指定してハミルトニアンを定める。参照ハミルトニアンの断熱状態をターゲット状態として用いるのが断熱ショートカット(shortcuts to adiabaticity)の方法である。さまざまな実装方法が議論されている。断熱状態はBerry位相のような幾何学的効果の記述に用いられるが、そのことをよく考えてみると、任意のダイナミクスにおいて幾何学的な意味を見出すことができる。

     本講演では、断熱ショートカットの基本的な考え方およびダイナミクスの普遍的な構造を概観したあと、外部から周期的に駆動された確率過程の系を扱う。平均バイアスがゼロでも有限のカレントが生じるThoulessポンプの現象や、高周波領域におけるFloquetの方法、完全計数統計とゆらぎの関係式などについて統一的に議論する。

    参考文献:
    [1] K.T., K. Fujii, Y. Hino, and H. Hayakawa, Phys. Rev. Lett. 124, 150602 (2020).
    [2] K.T., Y. Hino, K. Fujii, and H. Hayakawa, J. Stat. Phys. (2020) doi: 10.1007/s10955-020-02661-6


  • 古谷 峻介 氏 (茨城大学大学院 理工学研究科) 2020年11月4日 15:30からzoom (第15回QLCセミナーも兼ねる)

    対称性に守られた量子臨界相と共形場理論の大域的異常

     物質の相の分類は物性物理学における最も基本的な話題のひとつである。量子相はまず、基底状態がgappedかgaplessかという点に着目して大別できる。前者はさらに、対称性に守られたトポロジカル相(Symmetry-protected topological相、SPT相)やトポロジカル秩序相など、トポロジカルな分類が可能であり、最近20年間で活発な理論研究がされてきた。数年前我々はgapless量子相の分類の例として、「対称性に守られた量子臨界相」(Symmetry-protected critical相、SPC相)というクラスの相の存在を指摘した[1]。

     SPC相はSPT相と同様に、適当な対称性の下で“自明な”gapped相に相転移なしにつながらないことが保証される。gaplessな量子相にある物質の低エネルギーの物理は一般に、ある量子場の理論に対応することが期待できる。したがってSPC相の対称性による保護の問題は、量子相に対応する量子場の理論の対称性の問題に読み替えられる。具体的には、場の理論の持つアノマリーの、UVとIRの固定点のマッチングの問題に帰着される。

     本セミナーではスピン−S 反強磁性Heisenberg鎖などの、1次元量子スピン系を例にとりSPC相の性質を議論する。この議論にはHeisenbergスピン鎖の対応物である(1+1)次元共形場理論、すなわちSU(2) Wess-Zumino-Witten理論を用いる。本セミナーでは技術的詳細に深入りせず、上記の1次元量子スピン系の例においてSPC相という分類が、Haldane現象やLieb-Schultz-Mattis定理などの、1次元量子スピン系の現象とどのように関連するかということに重点を置き、解説を行う。

    参考文献:
    [1] S. C. Furuya and M. Oshikawa, Phys. Rev. Lett. 118, 021601 (2017).