強相関電子系理論研究室(太田研究室)千葉大学大学院理学研究科
千葉大学理学部

研究室についてのFAQ

学部学生、院生の皆さんからの、当研究室に関するよくある質問にお答えします。

専門分野は?

強く相関する多電子系(強相関電子系)の物理学に関する理論的研究。 研究内容を参照のこと。 具体的には、高温超伝導発現機構、t-J模型やハバード模型の数値的研究、分子性導体や遷移金属酸化物を含む種々の強相関電子系の電子状態、重い電子系や近藤絶縁体のダイナミクス、などです。 (キーワードの意味は、培風館「物理学辞典」などで調べて下さい。)

研究の目的は?

物質を支配する新しい物理概念の創出。

研究の方法は?

場の量子論を基礎とする解析的手法と、大型コンピュータを用いた計算物理学的手法を併用して、多体電子系の物理の本質に迫る。

研究の楽しみは?

今までだれにも不明だったことをみずから明らかにできるという楽しみ。

研究の結果は?

個々具体的な研究結果(論文)はたくさんありますが、この分野は「研究結果」が数年で出てきてそれで終了するというような底の浅い分野ではありません。 まだまだやらないといけないことがたくさんあります。 従って、研究テーマに事欠くことはありません。

研究の応用例は?

「半導体」は今では何のことはない固体物理学の応用例ですが、何年か先には「強相関電子材料」も日常的な応用例を豊富に持つようになっていることでしょう。我々は「応用」を目指して研究している訳ではありませんが、基礎研究が深遠なものであればあるほど、それが持つ応用の可能性は、インパクトの強い、より広範なものになると思っています。

その分野の概要を手っ取り早く知るには?

例えばアグネ出版の「固体物理」という雑誌には、最近の研究成果の比較的易しい解説などが載っています。また丸善の「パリティ」という雑誌も、しばしばこの分野の解説を掲載しています。図書館でここ数年のバックナンバーを調べてみることをお勧めします。

どんな科目を勉強しておくことが必要ですか?

力学、電磁気学、熱・統計力学、量子力学、といった物理学の基礎科目を履修し、しっかりと理解しておくこと。また基礎的な数学をマスターしておくこと。こういった基礎の上に高度な物理学の専門知識を積み上げることになりますから。

推薦する教科書は?

「強相関電子系理論基礎教程」の「教科書」を参照して下さい。 基礎科目の勉強には、名著と呼ばれるようなしっかりした教科書をじっくりと読みましょう。世の中に氾濫する薄っぺらな教科書はあまりお勧めできません。と公式見解はまあそうですが、薄い教科書というのは読みやすくていいですよね。

授業料以外に必要な費用は?

授業料を除けば、基本的には不要です。しかし教科書を買ったりする若干の費用はいるでしょう。また最近では自分でパソコンを買って役立てている人もいますが、これも必須というわけではありません。学生諸君が研究に必要な費用(学会出席の旅費等を含む)は、すべて研究室で賄います。

「強相関電子系」という分野の物理学会での位置付けは?

日本物理学会は、色々な分野や領域に分かれています。 各領域の大きさ(発表件数)は、最近はこのような分布になっています。 「強相関電子系」という領域が如何に大きいかが分かります。 太田研は、領域8(強相関)を中心に、領域3(磁性)、領域7(分子性固体)、領域11(統計力学)などが関係する領域です。 これほど大きく重要な分野なのに、なんと千葉大では理論家は私だけなんだな、これが・・・。

この分野の将来性は?

この「強相関電子系」の研究分野は、「基礎物理学の本質的な進歩」はもちろんのこと「実際的応用」さえ含んでいる幅広い分野です。 今まさに発展しつつある活気あふれる分野であり、皆さんが挑戦して悔いのないものだと思います。 げっ、佐宗先生こんな強烈なことまで書いておられる。 あ、田崎さんもこんなことを。 学生の皆さんは自分の将来のことですから、後悔しないようによく調べて下さいね。

研究室で4年生は何をやりますか?

まず特に前期は、アドバンストコースの基礎的な教科書を丹念に読んで、しっかりと勉強してもらいます。かなりハードな勉強です。 後期にもこれは続きますが、希望者には自分の学習した内容を発表するような卒研を課します。 その他、セミナーに出席したり(集中)講義を聞いたりは当然ですね。 少なくとも理論系では、学術論文が書けるような「研究」は、4年生では無理です。 あるとしたら、それは「偽物」か単なる「研究お手伝い」でしょう。 太田研では、学生諸君にとってそんな無意味なことはやりません。 4年のときは、大学院でしっかり研究するための基礎を学んでもらいます。 それが、学生諸君が正しく成長するために必要不可欠だと考えます。

研究室で院生は何をやりますか?

当然のことながら、特にM1では、講義を受講し割と少数の必要な単位をそろえる。 大学院用に何か教科書を指定し研究室で輪講する(週一回程度)。 4年生用の同様の輪講もあります。有志には卒研を課します。 研究室のセミナーに出席、卒業研究の進みぐあいをレポートする(週一回)。 学術雑誌に公表しても恥ずかしくない程度の内容の研究を、少なくともひとつはやり、修士論文としてまとめる。 以上を満たさないと修士号はもらえません。 博士後期課程では、当然の事ながら、最先端の研究に、文字通り寝食を忘れて取り組みます。 基本的には、大学院は「専門分野の研究がみずから出来るようになるための基礎的訓練」を受ける場所であり、そのための様々な課題を遂行することが、学生諸君に要請されます。

教育方針は?

僕は、「君たちの大部分はどうせ物理学の研究者にはならないんだから、まあ物理はほどほどに、むしろコンピュータとか社会で役に立つことを学びましょうね」という教育が、理学系学生にとって良い教育だとは思わないんですよね。 皆さんはそういう教育が本当に受けたいですか? 私はむしろ、「研究者に育てるつもりの教育」が、「研究者にならない人にとってもベストに違いない」と思っています。 つまり、「本物の物理を学んでもらう」って事なんですが。 間違ってますかねぇ・・・。 あと、「君達は将来(自分のためではなく)人を幸福にするために生きていかなければならないんだ」って、一部の学生さんには熱く語ってしまったなあ。 「そのため君達が今やらないといけないのは自分を可能な限りビッグな存在にすること」ってね。 ま、年取るとおっさんは説教したくなるらしいってことで。 育ちすぎのワイヤープランツ (^_^;;

研究設備は充実してますか?

環境抜群、何でも揃う太田研です。

研究室の雰囲気は?

極めて良好です。教官が何人もいる大きな研究室ではありませんから、とてもフレンドリーな人間関係が保たれています。 学生の皆さんに可能な限り快適な環境を提供することが教官の勤めだと思います。 現在は新しい建物に移り快適なスペースで研究に励むことができます。

実験系は毎日大学に出てこないといけないけど理論系はセミナーなどがある日以外は出てこなくて良いというのは本当ですか?

実験系との比較で言えば、この点は確かに少しは自由かもしれません。 しかし、大学の良いところは、教官や先輩などあなたより専門分野を良く知っている人間が何人もいて、彼らは皆、人にものを教えたがっている人たちだということ。 利害が複雑に絡んだいわゆる「利益集団」からは遠い存在です。 そのような中でより良く知識を得ようと思ったら、教官や先輩と密接に交流を保ち彼らから積極的に知識を吸収する心掛けを持つことが重要なのは言うまでもありません。 大学と言うのは、知的交流の場なのです。 もちろん静かに教科書などを読む時間も重要なのは言うまでもありませんので、理論系の場合(少なくとも太田研では)、研究室を可能な限り静かに集中できる環境にするよう努力しています。 少なくとも漫画本を読んだりパソコンゲームに打ち興じたりする場所ではないとは言ってます (が、でも、まぁ、皆さん適当に楽しくやっているのが現実ではありますが)。 ←あ、これ、でも「節度の範囲内で」ですよ。

この研究室はどんな学生にとってhappyですか?

基礎科目をしっかりと勉強してきたやる気のある学生。 将来、研究者あるいは高級技術者となるための、基本的素養を身に付けたい学生。 「自分の頭でものを考え、新しいもの生み出し、また現在の価値あるものを未来に継承することで社会に貢献する」ことを、将来の生業としたいと考える学生。

この研究室はどんな学生にとってunhappyですか?

ほんとは物理なんかやりたくないと思っている学生。 当研究室にはそのような学生はいませんが。

研究室での研究の自由度は?

学生に大きく依存すると思います。 基礎がしっかりしていて、研究経験もある程度できてきて、任せておいても十分やれる人には、自由にやってもらっています。 そうすると、教官の持っている知識を実に巧みに吸収し、メキメキ頭角をあらわしてくる学生が、博士前期課程でも若干名は出てくるように思います。 でも普通の学生さんにとっては、色々と相談しながら研究の方向を決めていくことが、良い結果に繋がると思います。

どうやって所属研究室を決めたら良いですか?

物性系か素核宇宙系か、理論系か実験系か、などまず自分のやりたいことをはっきりさせましょう。単に流行を追ってはいけません。 人の意見にふらふらついていってはいけません。 あなたが本当にやりたいことは何ですか、しっかりと自分を見つめなおしましょう。 こんな文章も役に立つかもしれません。 次に、(最近は少数ですが)決して行ってはいけない研究室を除外しましょう。(どうやって? ・・・ってそんなことここには書けませんよ。) 先生の講義はどうでしたか? <何言ってるか分からない><この先生、講義してるけど実はよく分かっていないんじゃないか>などと思うなら、最初からペケですね。 <質問に行っても満足に応えてくれない>のもペケ。 そう、<コミュニケーションが難しい>とか<会話が成立しない>なんてのは論外です。 最後に、幾つかの研究室を実際に訪問し、研究室を良く見ましょう。 おのずと決まってくるのではないですか? なお、どの分野にするか迷っているなら、こんなのこんなのこんな文章を一読してみてください。 こんなのもネ (^_^;; なお、今時そんな人はいないかもしれませんが、本物の物理は素粒子にしかないと思っているような古典的な方には、P. W. Anderson の論文 "More Is Different" [Science 177 (1972) 393] を一度じっくりと読んでみることをおすすめします。 最近のでは、R. Laughlin "Self-Organization of Matter" [パリティー 17 (2002) 4] とか、田崎著「熱力学-現代的な視点から」の8~19ページ辺りにも、類似の記述があります。

学部卒で就職するのと修士卒で就職するのとどっちが有利ですか?

あなたが、出来るだけ高度な技術職、研究職に就きたいなら、当然修士(ある場合には博士)を出たほうが有利だと思います。

卒業後の進路は?

メンバーページの「卒業生・修了生」の進路先を見てください。 先輩諸氏は様々な分野で活躍しています。 太田研では、学部卒業生はほぼ全員大学院進学、博士前期課程修了生は大手メーカー、情報系企業、外国の大学院を含む博士後期課程などに進んでいます。 博士号を取った後はポスドクとして給料をもらいながら研究を続けるというパターンが最近では一般化しています。 物性理論系なら、博士後期課程を出た後でも採用してくれる企業は多いです。

他大学からの学生も受け入れますか?

もちろんです。 当研究科理化学専攻(博士前期課程)物理学分野の入学試験は、他大学の学生も本学の学生と全く差別のない完全にフェアーなものになっています。 他大学の学生に不利になるようなシステムはいっさいありません。現に当研究室メンバーの何人かは他大学の卒業生でした。

留学生は受け入れますか?

もちろんです。 日本人学生と全く区別しません。 現に過去のメンバーのひとりは中国からの留学生でした。 彼から直接話を聞いてみるのも良いでしょう。 博士前期課程では、講義の内容を理解でき研究室のメンバーと専門分野の議論ができる程度の日本語の能力が要求されます。 しかし教官との会話や研究上の議論はすべて英語で済ますことも可能です。 博士後期課程に関しては、日本語は最低限でもかまいません。 (・・・って、日本語で書いても意味ないか。)

博士後期過程からの受け入れは?

もちろん可能です。 しかし誰でも受け入れるというわけにはいきませんから、事前に直接コンタクトしてください。

え? あなたも質問したいことがある?

なら、すぐohta[at]science.s.chiba-u.ac.jpにメールしよう!


太田研から眺める富士山

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